習慣というのは恐ろしい。実は近年紅白歌合戦への熱が少し冷めつつある。それでも手が勝手にNHKへとチャンネルを合わせてしまう。そろそろ、他の番組を見てもいいのではないか。歌の好みとしてはテレビ東京の「年忘れにっぽんの歌」のほうが自分に合っている。そう思っているのに、気が付けば「1」のボタンを押しているのだ。イッツオートマチック!
いや、きっと今回はそれでいい。紅白歌合戦の大きなターニングポイントだもの。それに、なんだかんだといいながら、紅白は毎回出会いと発見をくれる。2018年、ずっと聴かず嫌いだった米津玄師様と会わせてくれた恩を忘れてはいない。King Gnuの「白日」を知れたのも2019年の紅白がきっかけだった。
さあ、今年は誰――。
ということで、今年も懲りもせず、遅すぎる紅白レポ、レッツゴー!
●新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」
明らかにNHK向きではない序盤のセクシーなダンスをどうするのか。保護者のように見守ったが、彼女たちは臆することなく、それどころかいつも以上に伸びやか&過激にやっておられ、若さと無邪気さ、そして勇気を感じた。彼女たちの後ろで、首振りダンス部分以外もほぼ完璧に踊っていたMISIAがキュート!
●鈴木雅之「め組のひと」
今回のナイスミドル賞。大人の色気をまき散らしていた。鈴木雅之さんは毎回、背中から映すカメラワークがあるのだが、わかる。歌う背中がすごくカッコイイのだ。客席に行き、ダンスで盛り上げていたJO1、ノリノリで顔文字の^一^状態になっているバカリズム、「めっ」の部分で、アップで抜かれた美しすぎる吉高由里子など、3番手ながら見どころ満載。
●すとぷり「スキスキ星人」
新たな文化に置いていかれないよう必死な私に、時代は容赦なく次の刺客を送ってくる。かかか彼らはいったい!? 客席のどよどよ感もハンパなく、受け入れるのに少々時間がかかったが、慣れればなかなかハッピーである。ピンクヘアのメンバーがイケボだったので公式HPで調べると「さとみ」という方だった。妄想ちゅちゅちゅ……。
●純烈「だってめぐり逢えたんだ~NHKプラスver.~」
客席を回り、服やら筋肉やらに貼り付けられたQRコードを、カッコつけながら皆さんに提示し、心を込めて歌唱しながらその読み取りまでおねだりする、という難易度の高い技をやってのけた純烈、さすがである。私なら歌詞が飛ぶ。
●ano「ちゅ、多様性。」
グレーの衣装が可愛く、歌もクセになる。1年前くらいはバラエティに出ている彼女を見てイライラしていたのに、今ではゲロゲロと一緒に歌っている自分にビックリである。
●山内惠介「恋する街角」
お笑い芸人の方とのコラボはいいとして、裸芸は必要だったのだろうか。途中、花柳糸之社中の方々が踊りで登場し救われたが、NHKは本当に、山内惠介さんの懐の深さに甘えすぎだと思う。
●乃木坂46「おひとりさま天国」
はじめて聴いたが、まさに私サイドの歌じゃないか! 歌の世界で「おひとりさま」といえば長らく、寂しくて泣くとか恨むとかのポジションだったが、時代は変わったなあ(しみじみ)。さっそくカラオケで歌おう。
●郷 ひろみ「2億4千万の瞳~ブレイキンSP~」
毎年自分の最高値を更新する男、ヒロミGO。今回はなんと、片手倒立の大技「マックス」に挑戦。補助はあったものの、その成功に浜辺美波の「ブラボー!」の声が響き渡り涙。郷さんは68歳らしいが、彼にとって年齢はただの数字の羅列。魂はきっと永遠の10代だ。
2024.01.26(金)
文=田中 稲