昔いた「空想の友達」

 私には小さい頃、友達がいた。背中に羽が生え、ピンク寄りのオレンジ色をしたスリップドレスを着て、常に私の顔の周りを飛びながら「アノサー」「アンタサー」とギャルのように話しかけてくる友達であった。

 けっして暑さでおかしくなったわけではない。妄想の友人、イマジナリーフレンド(IF)の話である。名前は「ツィー」だった。

 私は身体が弱く、中学2年生くらいまで、よく学校を休んでいたが、彼女がいたから寂しくなかった。あんなにずっと一緒にいていろいろ相談したのに、いつの間に忘れてしまったのだろう。

 ウィキペディア情報ではあるが、イマジナリーフレンドとは、次のような説明が書いてある。なになに――。

『通常児童期にみられる空想上の仲間をいう。イマジナリーフレンドは実際にいるような実在感をもって一緒に遊ばれ、子供の心を支える仲間として機能する。イマジナリーフレンドはほぼ打ち明けられず、やがて消失する。
主に長子や一人っ子といった子供に見られる現象であり、5〜6歳あるいは10歳頃に出現し、児童期の間に消失する。』

 ほうほう。成長過程でいなくなるものなのか。じゃあ、いいか……。

 しかし先日、イマジナリーフレンド(IF)をテーマにした映画「ブルー きみは大丈夫」を観に行き、「じゃあ、いいか」という気持ちが吹っ飛んでしまった。

 叫びたい。本当にごめん! 私のIF、カンバーック!!

 イマジナリーフレンドがいた方、この映画は危険だ。ハンカチが5枚くらいいる。『インサイド・ヘッド』に登場する心の友達・ビンボンもヤバかったが、ブルーは距離感がリアル。だから感謝と同時に、罪悪感がブッシャーと溢れ出る!

2024.07.04(木)
文=田中 稲