初めての現場はいっぱいいっぱい

――まったくの新人ながら菊池宏樹役という、キーパーソンを演じることのプレッシャーみたいなものはありましたか?

 宏樹は確かに出番も多いし、いろんな人と絡む人物だとは思うんですが、役の大きさから自分はどういう立ち位置にいないといけない、という気持ちはなかったですね。次はこれをやる、その次はこれ、と与えられたものに反応することで、いっぱいいっぱいでしたから(苦笑)。

――東出さんと菊池には共通点が多いような気がしますが、劇中、神木隆之介さんが演じられた映画部の前田のような同級生を、学生時代の東出さんはどのように見ていましたか?

 確かに高校時代の僕も、部活はレギュラーだったし、そこそこ目立つ存在だったとは思います。それでも、菊池と同じで、まったく悩んでないということはなかったんです。将来の不安があったり、高校生ならではの悩みもありましたから。

 そんなある日、前田じゃないですが、文化部の同級生と話す機会があったんです。当時の僕は漠然と大学に行くかもと思っていたんですが、その同級生は、「自分がやりたいことがあるからこの専門学校に行く」とか、「この大学のこの学部でこれを学ぶ」とか、将来の設計みたいなものが具体的にハッキリできていたんです。そのとき、雷に打たれたような衝撃を受けたんですが、それは前田に対して宏樹が感じたことに似ていると思います。

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2012.07.20(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Takashi Shimizu