このリゾートをつくり上げた総支配人のスゴ腕
このアナンタラではリゾートホテルには珍しく、本格的なアーユルヴェーダの施設があり、ドクターも常駐。スパトリートメントだけでなく、医療にのっとったアーユルヴェーダの施術が受けられる。
が、ドクターの考えの基本は自然治癒力を高めること。ホテルでの施術はあくまで手助けで、自己管理で健康を手に入れなさいと教えられたように思う。だから、食事もあくまで自由。好きなものをレストランで食べられるが、ドクターからは食べないほうがよいものと食べたほうがよいものを指導してもらえる。
ちなみにレストランは4カ所。イタリアン・レストランは今年、「ワイン・スペクテーター」誌のレストラン賞を、スリランカではじめて受賞している。でも、ちょっと日本人には塩気が強いかな? というお味だ。日本の鉄板焼きイメージのレストランは、パフォーマンスが見事で、思わず食べ過ぎてしまいそうなのはある意味危険かもしれない。
右:ハイティーは、民族音楽の演奏を聴きながら、海を眺めつついただく。紅茶好きにはたまらないのが、ナント15種類のお茶から好きなものを選べること。で、スリランカの民族音楽が郷愁を誘って、日本人のマインドにもとてもよく合うのが面白かった。
充実した施設を列挙するだけでもたいしたホテルだと思うが、さらに上をいくのがソフト。スタッフのサービス精神、ホスピタリティの素晴らしさだ。
空港からホテルの車に乗ったのだが、3時間半のロングドライブ。ドライバーはときに静かにこちらを気遣い、ときに雄弁にスリランカを語ってくれた。
びっくりしたのは、途中のサービスエリアでのトイレ休憩のとき。トイレを使うにはチップが必要という。小銭を用意しろということかなと思えばそうではなく、自分が払うのでトイレまで一緒に行かせてくれという。確かに、何もいわずにトイレまでついてきたらエーッと思うかも。きちんと説明するのがエライ! と感心してしまった。
くだんのドライバーしかり。ホテルスタッフみんなが嬉々として仕事をしているのがこちらにも伝わってくる。その様子がまたホテル全体によい空気を漂わせているのだ。
総支配人いわく「スタッフには自分の仕事にプライドをもつよう指導しています。プライドがあるから、ゲストへの心配りもできるし、楽しく仕事ができる」。
また、スタッフにはゲストのこころや様子を“読みなさい”ともいっているとか。ある客には親しげな対応が喜ばれるが、別の客にはうとまれることもある。タイミングを見計らってサービスをしなければ、せっかくの気遣いがアダになることもあるからだ。
総支配人=GM(ジェネラルマネージャー)と話していて、伝説の「マンダリン オリエンタル バンコク」のGMを思い出した。そう、よいホテルには必ずよいGMがいる。レストランによいシェフが欠かせないのと同じように。
聞けば、ここアナンタラのGMは辣腕で知られた人らしい。実際、彼は一日中ホテル内を歩き回り、ゲストに接してはスタッフの手本となり、事細かにチェック怠りなしなのだそうだ。で、けっこう厳しい人でもあるらしい。
スリランカの人たちは基本やさしく、こころ遣いのある人たちなので接客業に向いていると思うのだが、いかんせん島国。さまざまなグローバルスタンダードを知らないことも多い。
例えば、テーブルのどこにグラスを置くのが適切かというような、ちょっとしたことでも教わればブラッシュアップされる。そうしたサービスのディテールを詰めていくのが、GMの仕事なのだという。
グランドオープン前にして、好評を博しているこのアナンタラ。ちょっと気になるのは、ここまでホテルをつくり上げたこのGMが、12月には交替してしまうこと。新しくこのタンガラにやってくるGMの責務も重い。
が、やはりホテル激戦区のプーケットで、人気のアナンタラを任されている人のようなので、楽しみでもある。GMのカラーによって、どれだけホテルの感じが変わるのか、くらべてみる楽しみも増えたスリランカのアナンタラだ。
Anantara Peace Haven Tangalle Resort
(アナンタラ・ピース・ヘヴン・タンガラ・リゾート)
所在地 Goyambokka Estate, Tangalle
電話番号 047-767-0700
http://tangalle.anantara.com/
2016.11.07(月)
文・撮影=大沢さつき