インドの南東に浮かぶセイロン島は、北海道よりは小さいが九州よりは大きい“光り輝く島=スリランカ”。

 熱帯の小さな島は古代からの歴史と、海のシルクロードや大航海時代に往来した異文化とがブレンドされ不思議な魅力と表情を湛えている。でも、ベースは信仰篤い、温厚でほがらかな人々の笑顔。手先が器用で、教育水準が高くて、きれい好きな国は、幸運に出合う力=セレンディピティの語源となった。

 さまざまな顔を見せるスリランカの中で、4エリアのおすすめステイ先をご紹介します。

 第1回は大航海時代のコロニアルな面影が色濃く残る城砦都市ゴール。レトロなヨーロッパとプリミティブな南アジアの混在するエキゾティックな街でのおすすめステイ先は?

» 第2回 【文化三角地帯】天才建築家バワの最高傑作ホテル
» 第3回 【ヌワラエリヤ】古きよき紅茶文化に浸る休日
» 第4回 【コロンボ】レトロで優雅なオールドデイズステイ

■アマンガラ
 Amangalla

コロニアルな空間で“アマン”を満喫

1684年に建てられた建物は、1863年、ニュー・オリエンタルホテルとして開業。スリランカを代表する建築家ジェフリー・バワの祖父母は、このホテルで出会ったという。

 要塞内の旧市街に入るとすぐ、17世紀のコロニアルな白い建物が目に入る。かつてオランダ軍の総司令部が置かれていたとも、東インド会社職員の住まいだったともいう建物。英国植民地時代、アジア最古のホテルであるニュー・オリエンタルホテルとしてオープンし、いまアマンガラとしてゲストを迎えている。

21×10.5メートルのプールにはモダンなガゼボが配され、アマンガラの中でも無国籍なアマン空間になっている。

 歴史を感じさせるクラシックな趣はそのままに、とはいえ古びた感じのない空間はさすが。コロニアル建築ならではの高い天井、半戸外の開廊形式のテラス。インド洋からの潮風が、遮られることなく吹き抜けていく。200年を越す美しい庭園には、ほどよくモダンなデザインのプールが水を湛えている。

 並木通りに面したテラスでお茶を飲んでいると、時計が示す時間から逸脱し、近過去へ転送されたかのような錯覚に陥る。ホテルの空間だけでなく、通りの風景すべてがデジャビュ。セピアの時代を彷彿させる。

 こんなコロニアルな時代に生きていたはずはないのだけれど……。

〈左〉客室の扉には、シンハラ文字の表記も。ドント・ディスターブの札もシンハラ文字で書かれている。
〈右〉寝室のベッドはすべてロマンティックな四柱スタイル。

撮影=小野祐次
構成・文=大沢さつき
コーディネート=橋迫恵(セレンディピティ倶楽部)