1988年、タイのプーケット島に開かれたアマンプリからアマンの歴史は始まる。それはブランドの理念を結晶させたリゾートだった。自然と共生するランドスケープは劇的で、敷地内に地元の文化を尊ぶデザインが行き渡る。戸数を抑えたヴィラはプライベート性が高く、優美。邸宅に招かれたような寛ぎを生み出すホスピタリティも秀逸。ラグジュアリーな非日常を体験させるスタイルは「アジアンリゾートに革命を起こした」とまで絶賛された。

 その後、アマンはアジアのみならず、世界中で革新的なリゾートを展開。「旅のブームを生むブランド」と注目を浴び続けている。なかでも、27軒目となる最新の東京は話題の的。都市をランドスケープとした次世代型アマンが、ここに誕生したのだ。

» 第2回 人力車によるショートトリップも用意!
» 第3回 シングルのゲストへの対応も手厚い

日本の粋に彩られた安らかなサンクチュアリ

「ガーデンレセプション」と名付けられたロビーエリアはアマン東京の象徴。障子に見立てた吹き抜け天井は縦40m×横11m×高さ30mというスケールで、神々しくもある。禅の要素を取り入れた石庭や池を囲むのは板張りの縁側。縁側の外にレストランやバーラウンジ、ライブラリーなどが配置されている。
ラウンジから眺める夕暮れの空には、目の高さに富士山のシルエット。テーブルに運ばれてきたカクテルは、国産ラム酒と日本ハッカを使ったオリジナルのモヒート 2,400円。土地のものにこだわるアマンスタイルがここにも。

 日本初のアマンは東京の中枢、大手町に登場した。樹木の再生に取り組む「大手町の森」に接し、緑に恵まれ、さわやかな風がそよぐエリアだ。そこに立つ高層複合ビルの上層部にホテルは位置する。ゲストは1階エントランスでスタッフのほほえみに迎えられて、33階のロビーへ。エレベーターを降りると、目の前に壮大なスケールの空間が開ける。

 吹き抜けの天井は光を透かす和紙で覆われ、空と連なるように高い。フロアに区切りはなく、中央にはダイナミックな生け花を映す池と石庭のしつらい。その奥、大地の温もりをまとう玄武岩の列柱越しに、都市のスカイラインから富士山まで届くパノラマが迫り上がる。天空に浮かぶ高揚、自然と共にある安堵感が、訪れる者を包み込む。一瞬にして非日常へと招き入れ、魅了する、アマン・マジックに陶酔できる空間だ。

2015.02.06(金)
文=上保雅美
撮影=橋本篤

CREA 2015年3月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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