世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第123回は、大沢さつきさんが人気急上昇中のデスティネーション、スリランカのディープな最新情報をお届けします!

一生の罪を清めてくれる寺を参拝しに行く

ケラニヤ・ラジャ・マハー寺院は見事なフレスコ画でも知られる。再建当時、まだ英国領だったこともあってか、アーチを多用した構造が何やら教会的で不思議な雰囲気。

 近年、観光目的地として急上昇中のスリランカ。北海道よりちょっと小さな国土に8つの世界遺産がある国は、日本だけでなくヨーロッパでも人気のデスティネーションだ。

 新しいホテルも続々オープンして、スリランカへの旅行熱はますますヒートアップしている。旅行会社のツアーも世界遺産巡りの王道ツアーがひと段落し、よりスリランカの真髄に触れるツアーが出はじめているようだ。そこでさらにディープで、新しい情報をお届け!

ケラニヤ・ラジャ・マハー寺院のストゥーパ(仏塔)。スリランカにはこうした仏塔がたくさんあるが、3つの形がある。半円のカーブに違いがあって、鐘状に縦長のもの・お椀を返したようなもの・山型のものとがある。こちらの寺のストゥーパは山型だ。

 コアな観光スポットが、ケラニヤ・ラジャ・マハー寺院だ。スリランカ一の都市、コロンボから東へ約10キロの場所にあり、車で約40分。

 ツーリストはなかなか訪れないところだが、このお寺はスリランカで最も崇められ、最古の寺ともいわれている。スリランカ仏教の三大聖地のひとつだ。「一度ケラニヤを参拝すれば、生涯の罪がそそがれる」というアリガタイお寺。週末ともなれば、地元の人たちの参詣でごった返している。

境内には一対の大きな仏像が立っていて、こちらにも圧倒される。境内脇には川が流れており、このケラニヤ川で釈迦が沐浴したと伝わる。

 この寺院の創建は2500年以上も昔といわれ、その後、何度かの破壊に遭うものの、再建され今に至る。釈迦が訪れ説法したとされる、初期仏教の神聖な寺院だ。現在も敷地内の教育機関では約100名の若い僧侶が、学校では約3000名の学生が学習する。チャールズ皇太子や現在の天皇陛下も来訪された、とても重要な寺院。

 スリランカには世界遺産に指定される仏教聖地が4つあるが、ここは地元の人たちが尊崇する、ローカルな寺院だ。ジモティの敬虔な様子にいちばん触れることができるので、世界遺産ではないが拝観するといい。この国の魅力のひとつである、“穏やかな国民性”の源を知ることができると思う。

 スリランカの仏教徒は国民の約7割だが、国全体に仏教的な教えが浸透しているように感じる。人々の穏やかさももちろん、清潔なこと、シンプルな考えだったり好みだったり……。

圧巻の壁画は、著名なスリランカ人のアーティストによって、20年かけて描かれた。ヨーロッパの新古典主義の技術とインドのヒンズー寺院の影響を受けたアーティストとか。色使いやディテール表現に独特なものがある。
壁画の元絵は3世紀に描かれたものだとか。釈迦の生涯、エピソードが描かれているのは、キリスト教会のイエスの壁画に通じるものがある。建物は13世紀、18世紀に再建されたものだ。

 有名な建築家のジェフリー・バワも自身は仏教徒ではなかったが、そのデザインや哲学にとても仏教的な考えが反映されていると、直弟子の建築家が言っていた。スリランカの真髄を知るには、この仏教的な教えや、考えに触れるのが近道なのかもしれない。

左:19世紀の再建工事には地元の職人たちに加え、インドから石工が、ミャンマーからメッキ職人が呼ばれた。建物の外壁に掘られたキュートな彫刻は、どの国の人の作品だろう?
右:こちらの菩提樹は、なんでも願い事を叶えてくれるという人気の木。祈願と祈願成就のお礼の人でいつも行列ができている。水を入れた瓶を持ってぐるりと一周し、その後そばにある仏陀像にお参りする。

Kelaniya Raja Maha Viharaya(ケラニヤ・ラジャ・マハー寺院)
所在地 Kelaniya, Sri Lanka
URL http://www.kelaniyatemple.org/

2016.02.02(火)
文・撮影=大沢さつき