世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第143回は、大沢さつきさんが、スリランカ南海岸のゴールで百花繚乱のホテル群を泊まり歩きます。

スリランカ人気の勢いは世界中で加速!

スリランカの南海岸では11月からホエールウォッチングの季節。ミリッサ港から出航して見られるのは、シロナガスクジラをはじめヒゲクジラ、シャチ、さまざまな種類のイルカの群れなど。写真はマッコウクジラの尾です。

 2016年、旅行業界の権威「コンデナスト・トラベラー」誌が発表した、人気デスティネーション第2位にスリランカがランクイン。ここ数年、観光だけでなく目覚ましい発展を遂げている国だけに、イケイケな雰囲気でホテルのオープンラッシュが続いている。

 で、もっとも注目なのが世界遺産のゴール、大航海時代の面影をのこす街を中心とした南海岸エリアだ。インターナショナル・ブランドのシャングリ・ラもオープンし、いまやホテル激戦区として、ツーリストには選び放題といううれしい状況。ちょうど到来したホエールウォッチングを楽しみつつ、3つのホテルを泊まり歩いてみた。

プライベートビーチに面した「アナンタラ・ピース・ヘヴン・タンガラ・リゾート」は、インド洋からの潮風が心地よく吹き抜ける。ガゼボ(東屋)でのんびりするもよし、サーフィンを教えてもらうもよし。

 まず最初にご紹介するのが、グランドオープン前なのにすでに高評価を得ている「アナンタラ・ピース・ヘヴン・タンガラ・リゾート」。ゴールから東へ約60キロのタンガラという街にあるホテルは、「ニューヨーク・ポスト」紙と「フォーブス」誌で早くも、2016年ニューホテルのワン・オブ・ザ・ベストに選ばれている。

 実際、ハードもソフトも申し分なくスリランカNo.1で、アジアのリゾートホテルNo.1の座も時間の問題では、と思わせるほど“おみごと”なホテル。ちょっと驚くほどよいホテルだ。

アナンタラといえばタイが本拠地のホテルだが、随所にスリランカ色を打ち出して、無国籍なリゾートホテルにならないように心配りがされている。写真はウェルカムセレモニーで、ゲストは太鼓の音とともに女性たちの歌声で迎えられる。スリランカの伝統的な儀式だそうな。

 で、何がスゴイかを少し挙げてみたい。まず客室。案内されて最初にうれしかったのが、部屋に置かれた紅茶がリーフティーだったこと。一杯ずつ真空パックになっていて、おすすめの蒸らし時間までが示されている。そう、スリランカは何といってもセイロンティー。おいしくノドをうるおしながら荷を解くと、次に気がついたのがプラグだ。

 昨今、スマホやPC、タブレット、カメラと、旅先での充電は欠かせない。だいたいどこのホテルでも、空いてるプラグを探すハメになるのだが、ここの客室デスク周りにはたくさんのプラグが設けられている。しかもすべてマルチプラグなので、変換アダプターが要らない。これはなかなか感動的に喜ばしかった。

ホテルの設計には、スリランカの伝統様式が絶妙に取り入れられている。随所に風が抜ける感じ、心地よい視野が確保できる。オーシャンビューの部屋のバスタブからは、美しい水平線が眺められるので、朝風呂がオススメ。
夜のレセプションも雰囲気があってステキ。そういえばこのホテルには、スリランカトップのコンシェルジュがいて(某老舗ホテルからヘッドハンティングされた……らしい)、アナンタラのスリランカ進出の本気度がうかがえる。

 客室にはほかにも、包帯やばんそうこうなどをセットした小さなファースト・エイドボックスが置かれていて、ちょっとした切り傷なら自分で消毒して手当てできるようになっている。すりむいたぐらいで、ホテルのドクターを呼ぶのもめんどうなので、これまた便利かと。

 そしてウナったのがルームキーだ。ジムのロッカーキーのようにブレスレットになっていて、最初渡されたときはエッ? と思ったのだが、これがじつによくできている。シリコン製なので、軽くてやわらかで着けていることを忘れるし、何より、部屋の前でバッグをごそごそ探して鍵を見つける必要がない。手首にはめたまま電子錠を解錠できるので、速やかに部屋に入れます。

エントランスに鎮座の車は世界ではじめてミリオンセラーになった車、モーリスマイナー1000。この車がつくられはじめた1948年は、スリランカが英国から独立した意義深い年だ。このヴィンテージカーでタンガラ市内を巡ることもできるらしい。

2016.11.07(月)
文・撮影=大沢さつき