バワの傑作ホテルには泊まらないと
エントランスから回り階段を上りきると広がる海。すっきり切り取られた海の眺望はモダンで、美しい。水平線を切り取って見せるバワの才能はさすが! です。
新旧とりまぜて、さまざまなタイプのホテルがいまのゴールにはあるのだけれど、やはりジェフリー・バワの傑作のひとつである「ジェットウィング・ライトハウス」を訪れないわけにはいかない。バワを知らない人でも、水平線に溶けこむように落ちるインフィニティプールをつくった建築家といえば、関心をもたれるのではないだろうか。
広いエントランスから、これまたゆったりとした階段を上がるのだが、階段にはバワ建築には欠かせないラキ・セナナヤケの彫刻が。ゴールを舞台に繰り広げられたスリランカとポルトガルの闘いの様子を表現しているそうだ。大航海時代の歴史。
実際、このホテルよりも快適、おしゃれなホテルはたくさんある。けれども、晩年のバワが建てた傑作ホテルを凌駕する建築はない。前述のトリも魅力的なコンセプトのホテルだが、バワのホテルがもつ引力のようなものは感じられなかった。もちろんそんなさりげなさがまた、トリの魅力でもあると思うのだけれど。
ライトハウスの圧巻は、なんといってもエントランスから彫刻のある回り階段を上がり、視界に海が飛び込んでくるロビーのプレゼンテーション。光の方向へと導くバワの手法は、いつもウマイっ! と思わされるが、ここ、白眉です。
バワの建物の廊下はとても特徴があって、これはロビーから客室に通じる廊下だが、張り出した格子の影を計算に入れているところがニクイ。もちろん時々刻々と様子が変わる。
ホテルとしての快適さはというと、まあ普通。バスタブなどの水回りは新しいので快適だし、シャワーも申し分ない水量。スリランカン的のんびり対応などがあったり、減点なところもちらほらあるので平均点といったところだ。
でも、ダイニングでの食事はおいしかった。洗練されすぎず、ローカルすぎず。シェフの目が一品ずつの料理だけでなく、サービスにも行き届いていて、おいしくも心地よく食事ができる。
左:ゴールを象徴とする色を外壁に塗り、まるで板張りかのようにラインも引いている。鮮やかなグリーンの芝生とのコントラストと岩を想起させるようなコンクリートの階段。右:階段の踊り場に置かれたテーブルと椅子。こんなところに置くかねという場所なのだが、座ってみると確かに心地よい視野。バワは自分が座りたいと思うところに椅子を置いたというが、こういう場所が好きだったのかも。
このホテルの楽しみ方は、やはりバワ探索。ホテル内をぶらぶら、できればフロントにお願いしてスイートを見せてもらうなどするのがいい。通路に岩が鎮座していたり、ゴールの街の色ともいうべきサマラカラーで塗られた壁、そして闇と光の動線などなど。
彼のフィロソフィーや建物にこめたゴールの歴史などに思いを巡らせながら、このホテルでしか味わえない時間を楽しみたい。
Jetwing Lighthouse(ジェットウィング・ライトハウス)
所在地 433A, Dadella, Galle
電話番号 091-222-3744
http://www.jetwinghotels.com/jetwinglighthouse
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- 文・撮影=大沢さつき
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