世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第208回は、たかせ藍沙さんが、伝統ある湯宿の再生物語を綴ります。


新しいスタイルのお茶と
緑の中の足湯

 東京から最短約1時間という好立地にある湯河原。近隣の熱海や箱根に比べて人も少なく、個人旅行に適した温泉町だ。

 そこに、十数年野ざらしになっていた古い旅館がある。「富士屋旅館」だ。3年の歳月をかけた大修復を終え、2019年3月に息を吹き返した。さっそく湯河原へと行ってみた。

 湯河原駅へはチェックイン時間よりも早めに着いたので、まずは駅から徒歩4分の場所にあるティースタンド「サ行」へ。新しいスタイルのお茶をいただくことができるカフェだ。

 店名は、「茶」の読み方のひとつの「さ」と、オーナー2人がサ行から始まる名前だったというユニークないきさつなのだとか。

 店内にはテーブル席、カウンター席、ベンチ席があり、テラスも建物中央と外側の2カ所にあるので、好きな場所を選んでお茶を楽しむことができる。

 メニューは、世界各国、日本各地のストレートティーのほかに、フルーツやチーズクリームを使ったアレンジ茶もあり、新感覚のお茶のおいしさと出会うことができる。

サ行

所在地 神奈川県足柄下郡湯河原町土肥1-16-6-1a
電話番号 080-4919-3829
http://sagyo.co.jp/

 次に、駅の観光案内所で勧められた「万葉公園」へ。

 ここは、温泉街の中心にある公園で、滞在先の「富士屋旅館」に隣接していて、歩いて行くことができる距離。

 園内には万葉時代の古代建築を模した「万葉亭」や、万葉集の中で出湯を詠った唯一の歌を刻んだ、万葉歌碑等がある。駐車場では、毎週日曜朝に観光朝市も催されている。

 この公園でのマストビジットは2カ所。「狸福神社」と「独歩の湯」だ。

 前者は、傷ついた老狸が湯河原温泉で完治したという言い伝えにもとづく。その後、温泉に感謝した狸が人々の温泉を広めたとか。

 現在では縁結びの御利益があるとされていて、絵馬に願い事を書くことができる。

 文豪・国木田独歩の名前が付けられた「独歩の湯」は、園内の西端にある足湯施設。

 円形の施設内には9つの足湯があり、足つぼが刺激できたり、ジャグジーになっていたり。園内の緑に囲まれた足湯巡りを楽しむことができる。

 入湯料300円には、サンダルの貸出が含まれているし、足を拭くためのタオルの販売もあるので手ぶらでも大丈夫。

 公園自体は24時間入ることができるが、「独歩の湯」は季節によって営業時間が変わるので事前に確認を。

万葉公園 足湯施設「独歩の湯」

所在地 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上704
電話番号 0465-64-2326
http://www.yugawara.or.jp/dayplan/ashiyu.php

2019.05.21(火)
文・撮影=たかせ藍沙