めくるめく夕食に
舌鼓を打つ夕べ

 あれこれ館内を散策しているうちに、あっという間に食事の時間となった。

 食事は新館1階にある「瓢六亭」でいただくことになる。

 ここは、食事だけでも利用することができるが、オープンしたてなので、今ならまだ予約を入れやすいという。

 この日の夕食は「春爛漫」というタイトルが付けられ、先付けからお椀、向付、揚げ物、強肴、焼き物、炊き物、ご飯物、そしてお菓子の9品。

 宿泊料金に含まれるコースに、炊き物として鮑のしゃぶしゃぶ(別途10,000円)を追加した豪華版だ。

 実は、この旅館の再建は、全国に飲食店等を約400店舗展開している「際コーポレーション」の渾身のプロジェクトなのだ。食事が美味しくないわけがない。

 先付けは、炭火で焼いた筍と貝を添えた一口のご飯。

 色鮮やかなお椀は、海老とイカと桜を使ったしんじょうに、ヒスイ豆のすり流し。桜の香りが春を感じさせてくれる。

 そして、向付は小田原漁港で水揚げされたアオリイカと鯛の刺身、揚げ物は鰻と山菜、丸十(さつまいも)の天ぷら、強肴は富士山を模したダイコンの酢炊き、焼き物は炭火で焼いた生粋かながわ黒毛和牛と近江牛。

 近江牛は、NHKの人気番組で紹介された滋賀県にある「サカエヤ」の新保吉伸さんが手がけたものだ。

 ここで、オプションの鮑のしゃぶしゃぶとなり、女将がていねいに鮑を1枚ずつ鍋からお皿へと入れてくださる。

 表面がやわらかく、かすかなコリコリ感が残る絶妙な火入れに悶絶! 実は、鮑のお刺身はコリコリしすぎて好きとは言えなかったのだけど、これは美味しい!

 お肉でそこそこお腹が膨れていたものの、箸が止まらずに完食してしまった。

 最後に土鍋で炊いたご飯。そこに、アジのなめろう、カツオのふりかけ、ウドのきんぴら、山菜のお浸し、お新香とご飯の友が5種類も!

 どれもこれも美味しくて、お代わりをしたかったけれどもうお腹がはちきれそう。

 それでも別腹は残っていた(笑)。最後のデザートは、日向夏と湘南ゴールドを使ったアイスとわらび餅、そして塩昆布が添えてあった。甘味と塩味のスパイラルでこちらも最後まで美味しくいただいた。

 新鮮な旬の食材のエネルギーと、すぐに部屋に帰れるという安心感とが、胃袋のキャパを広げてくれたようなめくるめく夕食だった。

 翌日の朝食も土鍋ご飯が主役。またもお腹いっぱい食べざるを得ないほどの(笑)、とびきりの美味しさだったことは言うまでもない。「瓢六亭」では、ランチは1,000円台から丼物などをいただくことができる。

 「富士屋旅館」では、2019年7月19日(金)までの開業記念プランや、平日限定のひとり旅プランを設定している。前者は通常宿泊料金の半額に近いお得な料金なので、予約はお早めに!

富士屋旅館

所在地 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上557
電話番号 0465-60-0361
http://fujiyaryokan.jp/

2019.05.21(火)
文・撮影=たかせ藍沙