◆滋賀県草津市「セジール」

日本有数の肉の達人が
満を持して開いたレストラン

 名店のシェフたちが絶賛する“肉の達人”がいる。株式会社サカエヤの代表で、精肉店「肉 サカエヤ」とレストラン「セジール」のオーナー、新保吉伸さんだ。

 とくに肉屋を目指していたわけではなかったという新保さんは、いくつかの肉屋を転々とした後、たまたま廃業となった会社を譲り受けて27歳で独立。2001年のBSE問題で経営危機に陥ったことが転機となり、近江牛の生産農家のもとに通って知識を深めていく。それが彼の肉に対する考え方を根本から変えた。会社の規模を大きくするよりも、その価値を理解してくれるシェフたちに上質の肉を届けることに軸を置くようになったのだ。

 新保さんの精肉は日本各地の名シェフたちを魅了していった。その彼が満を持してオープンさせたのが「セジール」だ。腕を振るうのは星野リゾートで料理長として活躍していた村田巧シェフ。新保さんの肉に出会い、惚れ込んだという。

オーナーの新保吉伸さん(左)と村田巧シェフ。

「セジール」でいただくことができる肉料理は、1頭ずつ異なる肉の性質を新保さんご自身が見極め、その日のベストな状態の肉を村田シェフに託す。「毎日が挑戦なんです」と言う村田シェフは、炭火に載せる網の高さを調整するなどの工夫を凝らし、その日の肉に合う最良の火入れを施す。美味しくないわけがない!

 前置きがながくなったけれど、京都で新幹線を降りて琵琶湖線に乗り換えて南草津駅まで約20分、駅からはタクシーで約10分という道のり。タクシーを降りると、一軒家のガラス越しに肉のショーウインドーが見えた。精肉店「肉 サカエヤ」だ。レストラン「セジール」の入り口は左側にある。

店舗は一軒家で、右が精肉店「肉 サカエヤ」、左が「セジール」だ。駐車場もある。

 店内は、シンプルながら木の温もりを感じられるインテリア。奥にはワインセラーが見える。テラス席も気持ちよさそうだけれど、この日は雨だったので屋内のテーブルを選んだ。ランチのコースは2種類。スープと前菜、メインの肉料理、コーヒーもしくは紅茶、そしてコースによってはデザートも。せっかくなので、アラカルトにして肉三昧することにした。

気候のいい季節には屋内とテラスがひと続きになる造り。
フロア奥にはワインセラーがあり、グラスワインも数種類用意されている。
アラカルトのメニューはボードで。メインの肉は2~3日で変わる。

 まずは、前菜の盛り合わせ。6種類を少しずつ楽しむことができる贅沢な一皿だ。楽しみにしていた愛農ナチュラルポークのリエットは甘みがあってまろやか。四角く成型されたブーダン・ノワールはリンゴのピューレとの相性が抜群!

カトラリーレストは牛の骨!
前菜の盛り合わせ。手前が愛農ナチュラルポークのリエット、そこから時計回りに、豚のミンチと鶏のレバーを使ったパテ・ド・カンパーニュ、豚の頭と足を使ったパテのフロマージュ・ド・テッド、豚のもも肉を使ったハムのジャンボン・ブラン、豚の血を使ったソーセージのブーダン・ノワール、近江牛のレバーのコンフィ。

 炭火焼きの前にもう1品、近江牛のタルタルを。これもどうしても食べたかった。ひとくち食べると、まずは肉と玉ネギの食感のコントラストが、そしてそれらが口の中でとろけて旨みを増していく。こんなタルタル、今まで食べたことあったかしら、と思うほど雑味がなくて美味しい。メインに期待が膨らむ。

近江牛のタルタル。

2017.11.20(月)
文・撮影=たかせ藍沙