◆中華寝台(Chinese bed)
[渋谷]

なんと、ワインペアリングは
フリーフロー!?
ノンアルのペアリングも充実

 「中華寝台」。

 店名を聞いたとたん、不思議な気持ちになった。聞けば、隠れ家イタリアンShibuya bedの業態変更だという。ベッドから寝台へ……、洒落は利いているが、あまり期待できないかな。そんな気持ちで向かった渋谷文化村通り。

 「ただの業態変更ではないですから! 総合プロデュースはあの六本木の人気中国料理店『虎峰』の山本氏です」とオーナー。なんですって!

 そのもとで腕をふるうのは、上笹俊シェフ。南青山の「Essence」で7年、そのうち副料理長として3年間研鑽を積み、その後プライベートシェフズスタジオ山岡で半年ほど山岡シェフに師事した実力派。なんとまだ28歳というのに、ソムリエと、国際薬膳調理師の資格も持っているのだとか。しかもシュッとしたイケメンだ(そこも肝心)。

 客席はカウンター8席。一挙手一投足が客から見られてしまうオープンキッチンのスタイル。劇場型レストランは好きじゃないが、ここはほどよい緊張感でライブ感が楽しめそう。メニューはコースで12,000円(税抜)。さあ、魅せてもらおうじゃないか。

 「まずはこちらを開けてください」。

 虎峰出身のスタッフ、渡辺氏が登場。小気味よいサービスが始まる。

 中に入っていたのは、フォアグラ最中! パリッとした皮の中に、マンゴーのピューレ、フォアグラ、いちじく。

 「うちはお食事とともに楽しんでいただくお飲み物も自慢です」と渡辺氏。「単品もありますが、飲み放題のワインペアリング8,000円がおすすめです」。えっ、ペアリングなのにフリーフローでいいんですか!? さらに、「実はノンアルのペアリングも4,000円でやっております」と言うではないか。お、それは興味深い。今回わたしはノンアルでやっていただこう。

 前菜盛り合わせがやってきた。美しい。クラゲと紅芯大根を黒酢で、天然の鯛をさっぱり仕上げたもの、卵黄と黒ゴマソースの揚げピータン、白ワインで漬けたプチトマト、生搾菜、棒棒鶏。

 なにやらヌーベルシノワな一品が。「冷やし麻婆豆腐でございます」。マーラーでしっかり味付けした豚肉。そこに冷たい豆乳。ユニークなだけでなく、うまい。このあたりは虎峰のニュアンスだな。

 なんだなんだ。生ハムスライサーが登場してきたぞ。ほどよく薄切りにされたのは、脂身のうまいことで知られるブランド豚、加藤ポーク。

 そして出来上がったのが、雲白肉。四川の定番前菜。

 揚げた大根餅。外はカリッ、少し歯を入れると中からはとろ~り。たまらないテクスチャー。自家製のXO醤は角のないうまさで好感。ワインの人、これだけで飲めてない?

 豚モモ、鶏ガラで12時間かけて抽出した上湯。塩味は金華ハムのみでつけてあるという。一点のくもりもない。ああ、早く胃袋に流し込みたい「少々お待ちください」。

 贅沢すぎる! まずはスープだけでいただこう。ごくり。のどをすべる時間の心地いいこと! そしてトリュフと一緒に。染みる。口福はここにある。

 もう、続きが楽しみで仕方なくなってきた。

2019.10.12(土)
文・撮影=Keiko Spice