◆X~TEN~
[西麻布]

肉マイスターが渾身のプロデュース
牛肉も野菜もすべてがスペシャル

「究極の焼肉店をつくります」

 その言葉を聞いたのは、2年ほど前だろうか。宣言したのは、田辺晋太郎。“肉マイスター”としてメディアにもちょくちょく登場しているあの男だ。

 2019年3月25日、ついにその日はやってきた。六本木・星条旗通りのとある場所。地下に降りると、「お待ちしておりました」の声が。

 完全紹介制。電話番号は会員以外に非公開。その店内はすべて個室となっていて、2名用1室、4名用が2室、6名用は、ワインセラー付きのスペシャル仕様! 

 部屋には、網と鉄板のふたつのグリルが備え付けられ、プロの焼き手がじっくりサービスしてくれるスタイル。提供されるのは32,000円のコースのみ。

 さあ、魅惑の肉タイムだ! スタートは都萬牛(とまんぎゅう)のコンソメ。テール、ネック、アキレス、スジなどを挽肉にし、48時間かけ、じっくりとうまみを引き出す。

 都萬牛は、月齢33から48カ月をかけ長期肥育された経産牛で、濃厚なうまみが特徴。だからこそ生まれる味わい。

 6種のナムル。ライムを利かせたニンジンのラペ、塩昆布とキャベツ、ビーツ、ブロッコリー、韓国産ぜんまい、ほんのり味噌を合わせたスナップエンドウ。素材を活かしたやさしい味付け。

 「野菜にも自信があります」と話し始めたのは、この部屋の担当となった副料理長の菅原さん。

 静岡の桑高農園を中心に、宮崎の農園からも取り寄せた自慢のラインナップなのだ。

 なんだ、なんだ! 大小ふたつの宝箱が運ばれてきたぞ!

 大きい箱の中には、但馬玄の三角バラ、都萬牛のランプにハラミ、松阪牛のサーロインが。

 興奮さめやらぬところに登場したのは、ユッケ。一面のキャビアをシェルスプーンですくうと、底には但馬玄のユッケ。

 但馬玄と書いて「タジマグロ」と読ませる肉は、ねっとりとした舌触りと食感で、まさにマグロ。キャビアの塩味と相まってなんともいえない口福感。

 もう一方は、北海道・はだての雲丹、さきほどお披露目されたトリュフを加えたユッケ。3つの食材を綿密に計算し、三位一体のおいしさに仕上げている。

 タンは、薄切り黒タン、厚切り黒タン、黒タンのしゃぶしゃぶ(写真なし)の3種類を用意。

 あらかじめ塩だれに漬けた薄切りタンの片面だけを焼く。

「焼けていないほうを下にして舌にのせてください。牛さんとのディープキスを楽しむかのようなかんじで」

 ……おっ、ジョークもいけますね(笑)。どんどんのってきたぞ!

 なにやら見慣れぬ調理器具が運ばれてきた。それはオイルプレスマシン。そこに煎りたての白胡麻を投入すると、油と搾りカスに分離されるのだ。

 ここで登場したのが、冒頭で紹介した肉マイスター・田辺晋太郎。胡麻油のみならず、アイデアのすべては彼が“搾り”出しているのだ。

 ミノサンドが焼き上がった。搾りたての胡麻油と塩をミックスしたものをちょいと付けて……、ジュワッと口いっぱいにおいしさが広がる。

2019.04.09(火)
文・撮影=Keiko Spice
写真=X~TEN~