焼肉はやっぱりタレだよね!
最後まで息もつかせぬ攻防が続く
待ってました! 赤身の肉、都萬牛のランプだ。
ごはんもやってきた。タレをまとわせた赤身肉をオンしてパクッとやる。もう、文句のひとつも出ない。20種以上の食材から作りだしたタレのキレのいいことよ。
米は、新潟のかやもり農園から。都内の有名焼肉店でこちらの米を使ったものを何度か食したことがあるが、炊き加減はここが一番! 米(ヨネ)と肉は永遠の相棒だ。
お次は、焼きすき。銀座の老舗、吉澤畜産から仕入れた松阪牛サーロインを焼きあげ、輝卵にニラのサルサと割り下を加えたものにディップ。
輝卵は、デパートあたりだと1個約500円で販売されている高級卵。和歌山産の山椒をパラリとふれば、輪郭のはっきりした新しいおいしさに変わる。
但馬玄カルビは、1人2枚。1枚目は半生に焼きあげ、ごはんの熱で脂を溶かして食べる。融点が低いからこそのとろける感。2枚目は少し多めに火入れし、食欲をそそる焼き色、そして甘い香りを楽しみながら。
〆に用意されたのは、「もつまぶし」。
小腸やギアラなど、内臓を土鍋で炊きこみごはんに。
「蟹ガーリックで味変して召し上がってもよろしいですよ」
香港の海鮮料理店で出てくるニンニクチップ。これがまたナイスなアクセントに。鰹と利尻産昆布でとった出汁をかけて、お茶漬けにもできる。
しかし、まだここで終わりじゃなかった。新たな道具が導入される。
マッコリ、はちみつ、生クリームを投入。そして、液体窒素で-196℃までいっきに冷却。マッコリのジェラートの完成!
「こちら、覚えていらっしゃいますか?」
あっ、胡麻油と分離された胡麻カスと、まさかの再会! たっぷりかけていただきます。
今回は紹介しきれなかったX~TEN~サラダ、レバー胡麻油。シャンパンもつ煮込み、ギアラ九条葱、厚切りハラミ、キャビアと冷麺を含み、全18品。この32,000円のコースには、それだけの、いや、それ以上の価値がある。
しかも、これで終わりじゃない。
「おみやげでございます」と、わたされたカレーパンは、「代々木八幡の365日の特注です」と言うではないか!
「頂点」の「てん」を意味して付けた、X~TEN~という店名に偽りはない。すべての生産者、食材に感謝をし、そのすばらしさを10割、あますことなく伝えたいのだという。
精鋭たちが切磋琢磨し、店が目指すところの頂(いただき)へと歩んでいく姿が見える。完全紹介制というハードルはあるが、チャンスをつかんだ場合は、ぜひ、訪れてほしい。
「究極の焼肉店をつくります」
あの日、高らかにそう宣言した田辺晋太郎は、有言実行の男であった。
X~TEN~(テン)
所在地 東京都港区西麻布1-4-46 カーサスプレンティット西麻布B1
電話番号 非公開
営業時間 17:00~23:30
定休日 日曜
予算 コース 32,000円、ワインペアリング 10,000円~
https://nishiazabu-yakiniku-ten.com/
[2019年3月訪問]
Keiko Spice(けいこ すぱいす)
東京都生まれ。得意なディスティネーションはハワイと香港。普段は3日に1回のペースで焼肉を中心とした食生活。別名「肉の妖精」。
Column
新店来訪! 美味しい出合いに一番乗り
ニューオープン、シェフやメニューが変わった店、面白い企画を立ち上げた店……などなど、なにかと「新しい」店を一番乗りで紹介するページ。「美味しい出合い」にご注目ください!
2019.04.09(火)
文・撮影=Keiko Spice
写真=X~TEN~