メインの炭火焼きを堪能したら
帰りには隣で精肉を買って帰るべし

 メインの炭火焼きは3種類お願いした。どうしても食べたかった愛農ナチュラルポーク、近江牛は村田シェフお勧めのランプを、そしてこちらも村田シェフが勧めてくださったフランス産のバスク豚。いずれも200グラムから100グラム単位でオーダーできる。

手前がこの日の村田シェフお勧め、バスク豚。左奥が近江牛、中央が愛農ナチュラルポーク。

 カットされた肉は、最初にテーブルに持ってきて見せてくれる。前菜をいただいている間に火入れするという流れだ。まずは近江牛とバスク豚。近江牛は、松阪牛、神戸牛と同じルーツをもつブランド牛。きめ細かい肉を噛むと甘い脂質が口の中でとろける。バスク豚はしっかりとした肉質で野性的。噛むほどに旨みを感じることができる。

左がバスク豚、右が近江牛のランプの炭火焼き。食べやすいようにカットされている。有機栽培のじゃがいもがベストマッチ!

 3品目の炭火焼きは愛農ナチュラルポーク。メニューにはなかったけれど、どうしても食べたくてお願いした。農業高校が授業の一環で育てている豚。年間100頭と数が少なく、豚肉を好きになれなかった新保さんが惚れ込んで販売を始めたもの。名シェフたちが絶賛する希少な豚肉だ。バスク豚とは対象的に甘みがあってやさしい味がする。

愛農ナチュラルポークの炭火焼き。添えられているのは日野菜かぶ(ひのなかぶ)という細長いかぶの仲間。根の先まで柔らかくて味が濃い。

 メニューにはサラダもデザートもあるけれど、他になにも入らないくらい肉でお腹いっぱいになってしまった(笑)。ちなみに、炭火焼きの肉料理に添えられている焼き野菜はすべて地元の有機栽培。肉だけでなく野菜もこだわっているのだ。

 日本各地の名シェフから引く手あまたな新保さんの肉。実は、出荷するほどの量のない希少かつ極上の肉は、ここ「セジール」でしか食べることができない。だから、わざわざ足を運ぶ価値があるのだ。

 食後には、ぜひ隣の精肉店「肉 サカエヤ」で買い物をしてほしい。ショーケースには、ここでしか手に入らない愛農ナチュラルポークや、新鮮でツヤツヤな内臓類、熟成肉などが並んでいる。高級肉を、塊から好きなグラム数、好きな厚さでカットしてもらえるのも普通の精肉店ではありえないこと。自家製のコロッケやハンバーグもある。

こちらは精肉店の「肉 サカエヤ」。外からガラス越しにショーケースが見える。
他では手に入らない希少な肉も並ぶ。どの肉も肉の達人の手によりさらに美味しく手当てされている。
近江牛のハンバーグ、愛農ナチュラルポークのハンバーグ、ホルモン焼きそばセット、近江牛コロッケ。このお店が近所にほしいと心底思った。

 メインのショーケースの奥に、塊肉がドドーンと鎮座している冷蔵庫がある。中で眠っているのは、日本各地のシェフたちがオーダーしたもの。食べ頃になるまでここでじっくり熟成されていく。新保さんは、それぞれの肉に合った菌、合った期間で、ベストな状態に仕上げてシェフ達のもとに届けているのだ。

ショーケースの奥には熟成中の塊肉がズラリ。

 たくさん買って帰りたかったけれど、この日は滋賀で1泊する予定だったので涙を呑んだ。次回は最終日にランチをしてそのまま新幹線に乗ろうと心に誓った。遠方から訪れる皆さんは、ぜひ買い物のことまで考えてスケジュールを組んでほしい。

セジール
所在地 滋賀県草津市追分南5-11-13
電話番号 077-561-3329
営業時間 11:30~14:00/18:00~22:00(L.O. 21:00)
定休日 毎週水曜・最終火曜
料金 グラスワイン 800円~、ランチコース 1,800円~、近江牛のタルタル 2,200円、前菜の盛り合わせ 2,300円、近江牛ロース炭火焼 200g 5,000円(すべて税抜)
http://www.omi-gyu.com/
https://www.facebook.com/restaurant.saisir
[2017年10月訪問]

たかせ藍沙(たかせ あいしゃ)
世界各地の旅&食情報を発信するトラベル&スパジャーナリスト。食のためにフライトを変更して遠回りすることも。著書は『美食と雑貨と美肌の王国 魅惑のモロッコ』(ダイヤモンド社)など。公式facebookページ「たかせ藍沙のファーストクラスで世界一周」と同名の新刊準備中。
Twitter https://twitter.com/aisha_t

Column

新店来訪! 美味しい出合いに一番乗り

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2017.11.20(月)
文・撮影=たかせ藍沙