【次に流行るもう一曲】
栞菜智世「Heaven's Door ~陽のあたる場所~」
話題のドラマ「校閲ガール」の主題歌
伊藤 2曲目は栞菜智世(かんなちせ)の「Heaven's Door ~陽のあたる場所~」。彼女は2014年、某オーディションでグランプリに選ばれたんですが、いくつかのメディアでは「和製セリーヌ・ディオン」って書かれています。この表現はかなりピントが外れていると思いますが、たしかに伸びのあるJポップと相性のよい歌声です。
山口 「和製セリーヌ・ディオン」ですか。気持ちはわからなくはないけれど、オジサンの匂いがするキャッチフレーズですね(笑)。若い子に伝わるのかな?
伊藤 彼女、実はそのオーディションでは史上最年長グランプリだったらしいです。4万人近い応募者から20歳という、女性タレントとしては決して早くないスタートを切ったということです。同オーディションのグランプリといえば榊原郁恵から始まり、深田恭子や石原さとみなど日本を代表するタレント・女優を生んでいるけど、確かにみんな中高生の時に受賞していますね。
山口 近年のホリプロはバラエティ番組から人気者になる「バラドル」の宝庫ですね。同時に、深田恭子、綾瀬はるか、石原さとみと、女優も着実にスターになっているし、演劇公演のプロデュースも積極的に行っています。でもルーツは音楽の事務所なんですよ。和田アキ子さんも、バラエティの印象が強いですが、素晴らしいシンガーです。
伊藤 そうですね。
山口 伊坂幸太郎原作の映画『陽気なギャングが地球を回す』の音楽プロデューサーをやらせてもらった時に、エンディングで、Skoop On Somebody+和田アキ子というコラボをお願いして、お仕事をご一緒しましたが、レコーディングの際の真摯な姿勢には胸を打たれました。歌手としての矜持と音楽へのリスペクトが感じられました。
伊藤 中高生は和田アキ子っていえばバラエティの人って思っているかも知れないけど、彼女は日本のR&Bの先駆けなんですよね。
山口 そうなんですよ。それだけにホリプロは、本格派シンガーのスターは待望のはずです。高い歌唱力を持ち、オーディションでのグランプリという看板を背負っている栞奈智世は、金の卵ですね。期待したいです。楽曲提供とかで関わりたいですね。
伊藤 ですね。そのオーディションでグランプリに選ばれてから2年を要しましたが、映画『僕だけがいない街』の主題歌でユニバーサル ミュージックからメジャーデビュー。22歳でアーティストのキャリアを始めた彼女、和製セリーヌというからには歌唱のクオリティ重視で攻めてくるんでしょう。今回はアップテンポなロックで爽やかに歌ってるけど、きっと今度はヒット狙いのバラードでくるはずだから、それに向かって楽曲を提案してみましょう。
栞菜智世「Heaven's Door ~陽のあたる場所~」
2016年11月9日発売 ユニバーサル ミュージック
初回限定盤[CD+DVD]1,600円、通常盤[CD]1,000円(税抜)
■栞菜智世は、1994年生まれ、福島県出身。2014年の某オーディションで、応募総数38,628人の中からグランプリに選ばれる。その後、2016年3月にシングル「Hear ~信じあえた証~」でメジャーデビュー。本作の表題曲は、石原さとみ主演の日本テレビ系ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」の主題歌。
■「Heaven's Door ~陽のあたる場所~」作詞/玉井健二、HiRO、前澤希 作曲/南田健吾
http://kannachise.com/
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