音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
今回は番外篇として、最新の洋楽を語ります。
【注目すべき洋楽曲】
ザ・チェインスモーカーズ
「クローサー feat. ホールジー」
NEWSは日本におけるEDMの先駆者?
伊藤 山口さん、ちょっと噂を聞いたんですけど、このコラム「来月、流行るJポップ」って残り2回を残すのみなんですか?
山口 はい。2013年8月に始まったこの連載。3年半が経って、一区切りということになりました。改めて過去コラムを読み返してみて、独自性はあって面白いなと思いました。自画自賛ですが(笑)。
伊藤 おーそうなんですね。だったら残りは来月流行るというよりは今後のJポップに関して話していいですか?
山口 いいですね。残り2回は、総括編をやりましょう。
伊藤 日本のポップスって、海外で流行っている音楽からの影響を受けて、それを日本人向けにローカライズしていくっていうことがありますよね。エレキブーム、グループサウンズ、フォーク、バンドブーム、R&Bとヒップホップ。どれも洋楽のトップチャートにアンテナを張った、トレンドに敏感なアーティストや音楽ファンが一般ユーザーに広めていく、みたいな。
山口 そうですね。残念ながらというべきか、Jポップの流行はLAの影響下にあります。アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひくというのは経済について言われた比喩ですが、ポップスについても言えますね。
伊藤 最近でいうとEDM(Electronic Dance Musicの略。近年世界的に流行し、数々のスターDJを生み出した音楽ジャンル)は大きなムーブメントでした。2000年代前半は頻繁にヨーロッパに行っていたんですけど、その時にクリエイターやDJからよく聞いた音楽スタイルが“エレクトロ”、これがEDMとの出会いでした。その時はまだEDMという言葉はなかったように思います。当時はそのまんまクラブミュージックって感じで、歌ものっていう印象はなかった。友達にヨーロッパで人気があったスウェーデン人DJユニットがいて、彼らのエレクトロなトラックを使って歌ものにしたのが「紅く燃ゆる太陽」。NEWSのセカンドシングルでしたが、今考えると日本のEDMの先駆けでしたね(笑)。
2017.03.15(水)
文=山口哲一、伊藤涼