自らが楽曲作りに関わるという決断

山口 人気タレントを多数抱えているパワーで、テレビやCMなどでキャスティング力が強いのは当然で横車を押す資格はあると思うのですが、デジタルに後ろ向きなのだけは、日本のために改めていただきたいです。僕は以前から、海外向けオンリーで良いので、「ジャニーズミュージック」というネットラジオをやってほしいと思っています。Jポップとしてクオリティの高い楽曲がたくさんありますから、人気のチャンネルに絶対なるでしょ? 日本にとってプラスですよ。

伊藤 タイミングはさておき、そのうちやるんじゃないですか。十分にビジネスになる形をイメージできますから。ただジャニーズ的ブランディングをどう考えるかですよね。50年以上続く老舗事務所であること、特別なスタイルが今のジャニーズをつくったこと。それらに対してリスペクトしつつ、どう新しい時代に向かっていくか? そんな岐路のド真ん中にいるのが今のジャニーズで、田口淳之介もその一人ってことです。

山口 芸能界で強大な力を持つジャニーズをやめたのですから、大きな決断ですよね。

伊藤 ですね。彼も30歳というひとつの節目に自分の人生を考えたんだろうけど、これの正解不正解はともかくとして、勇気ある決断だったと思います。これを正解にするにはこれからの彼が芸能界、音楽業界、そしてファンたちにどう向かい合っていくか次第。彼は優しく誠実そうなキャラの持ち主なんで大丈夫だと思いますが、誰かさんみたいに今までお世話になった人たちへの裏切り行為にならないようにしてほしいね。

山口 「誰かさんって誰?」とは訊かないね。大人だから(笑)。確かに好き勝手に暴れている人がいましたね(笑)。

伊藤 (笑)。楽曲に関してはアーティストがプロデューサーと組んで作ったスタイル、コーライティングですね。いままで田口淳之介がどのくらい音楽制作に関わってきたかは知らないけど、少なくとも自分で作るスタイルを選んだということは、前向きだし今っぽいと思う。反面、それは自分の作品に責任を持つということでもあるので、これからは今まで以上に音楽と対峙していかないといけないと思う。

山口 マスメディアのバックアップがなくなりますから、本当に音楽の力、アーティストとしてのパワーが問われるようになりますね。

伊藤 はい、これまで多くのスタッフに支えられてきたことを実感しているだろうし、それを噛みしめながら前に進んでほしい。それに少なからず自分の決断の代償を払わざるを得ないと思うので、それに負けないで音楽活動をしてほしい。

山口 バンドやシンガーソングライターはテレビの力は借りずに、ライブとネットとラジオとみたいなことでのし上がっていくのだから、「普通」のことですね。まとまった数のコアファンは抱えているでしょうから、クリエイティブと戦略があれば、成功できると思います。

伊藤 ですね、そのアドバンテージを大切にしつつ、それに甘えない姿勢が必要でしょうね。楽曲に関しては、そこまで驚きのあるものではなかった。もちろんしっかりとしたスタッフがついているのを感じたし、今までのファンは喜んでくれる内容とクオリティ。だけど個人的な意見としては、今までの田口淳之介を圧倒的に超えていくものであってほしい。過去の彼に興味はなかった人たちが「あいつやるな!!」って思うような。

2016.10.30(日)
文=山口哲一、伊藤涼