抗がん剤治療をするか、しないか。遺伝子検査で即決

 乳がんになったら抗がん剤治療は必ず受けると思っている方も多いのではないだろうか。しなくていいなら、受けたくない。それが本音だった。

 手術をして、放射線治療をしても、がんの罹患前とはそれほど大きな違いはないと感じていた。だからこそ、髪が抜け、体に負担のかかる化学療法には抵抗があった。正常な細胞まで影響を受けてしまう――そんなイメージが強く、できれば避けたいと思っていた。

 私の乳がんは「ルミナールB・HER2陰性タイプ」。このタイプの場合、抗がん剤を行うかどうかの判断材料として「オンコタイプDX」という遺伝子検査がある。手術で切除した腫瘍をゲノム解析し、再発リスクをスコア化してくれる検査だ。

 検体はアメリカへ送られ、費用はおよそ50万円。当時は保険適用外だったが、病院の協力で無償で受けることができた(現在は保険適用となっている)。

 私の検体がアメリカに行って1カ月後。スコアは0~100で表され、26以上なら抗がん剤を上乗せすることで再発リスクを15%以上減らせるとされている。

 私のスコアは42。この結果を見て、私も主治医も化学療法をするべきだと即決した。この検査のおかげで何の迷いもなくなった。

いちばん大変だった、化学療法の期間

 治療が始まってから、最もつらかったのは抗がん剤(化学療法)だった。副作用の出方は人それぞれだが、吐き気、食欲不振、骨髄抑制による発熱や倦怠感、脱毛、筋肉痛、手足のしびれ、爪の変化、涙目……。列挙したこれらの症状は、今見てもぞっとする。

 「いつ始めるか」も重要な判断だった。月末に原稿の締め切りがあったため、仕事への影響を考え、それまでに副作用への備えを整えた。

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