髪を失う覚悟と、ウィッグ選び

 抗がん剤にもいろいろな種類があるが、乳がんの治療で用いられる抗がん剤は必ず脱毛してしまう。遺伝子検査の結果から迷う余地はなかったが、抗がん剤治療で髪の毛がなくなってしまうことにはやはり抵抗があった。でも受けるという覚悟ができてからは前向きに捉えることにした。

 まず準備したのはウィッグ。看護師の方からいくつかおすすめされた中から「リネアストリア」というウィッグ専門店を選んだ。さらに人毛と人工毛のミックスがお手入れしやすいことも教えてもらった。

 実際にどういうウィッグを選んだらいいのかがわからなかったので、いつも髪を切ってもらっていたヘアスタイリストの方に相談した。するとウィッグ選びだけでなく、購入後にさらに私のヘアスタイルに合わせてカットもしてくださるとのこと。

 ネット上のカタログからウィッグの候補を2つ選び、それから試着ができるサロンを予約して、実際にかぶって1つに決定。購入後はいつもの美容室へ着用して出かけ、私に似合うようにカットしていただいた。他にも眉毛やまつ毛の脱毛対策として、つけ眉毛やつけまつ毛も購入しておいた。

仕事を続ける——それが精神的な支えに

 治療は3週間に1回、外来の化学療法室で行われた。1回につき約5時間。まず吐き気を抑える薬、その後に細胞の増殖を抑える薬を点滴で投与する。

 周囲の患者さんnは静かに体を休めていたが、私はパソコンを持ち込み、仕事を続けた。「いつも通り過ごすこと」。今思えば、それが精神的にはよかったのかもしれない。

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