現れた副作用。味覚障害、脱毛、そして皮膚炎

 投与直後は変化を感じなかったが、3~4日後から少しずつ症状が出始めた。関節痛、筋肉痛、便秘、味覚障害、倦怠感、脱毛、足裏の皮膚炎、爪の変色……眉やまつ毛は残ったが、髪の毛はすべて抜け落ちた。

 中でもつらかったのは味覚障害。口の中がケミカルな味に覆われ、何を食べても美味しく感じないのだ。マヨネーズ味が好きだったのに、まるで別物のように感じてしまった。美味しくないので何を食べていいのかわからなくなってしまったが、だしの風味だけは感じ取れたので、外食ではうどんやそばを選ぶようになった。

 次に、脱毛。こちらは最初の投与から2週間くらいは変化がなかったが、3週間目に入ると少しずつ抜けて、全部が抜けるまでには1週間ほどかかった。頭を洗うときに手櫛をすると、指に抜けた毛が絡む。洗って抜けて、乾かして抜けて……。どんどん薄くなっていって、鏡で自分の姿を見ると、悲しくなってしまった。

 さらに予想外だったのが、3回目の投与後に起こった足裏の皮膚炎。風呂上がりにくぎを踏んだような激痛を感じ、足の裏を見ると真っ赤に腫れていた。医師から「抗がん剤の副作用」と診断され、保湿薬を塗って耐えるしかなかった。湯船に入ることもできず、その間はシャワーだけで過ごした。

髪が戻り、少しずつ日常へ

 4回の投与を終えたのは2022年6月で手術から約半年。回を重ねるたびに体力が落ちていったが、治療が終わるとゆっくり回復に向かった。

 一番わかりやすいのは、やはり髪の毛だった。脱毛してからはウィッグの扱いにも慣れてきていたが、家にいるときは、綿でできた帽子をかぶって過ごした。取り外しも楽だし、夏場だと汗もかくので洗って使える。

 毎日鏡を見ている髪の毛のない自分には慣れてきて、むしろ貴重な機会だからと写真に撮ってもらうことにした。

 髪の毛が生え始めたのは約3カ月後。伸び始めてから初めて美容室に行き、ベリーショートに整えてもらった自分を見て、全く別人に生まれ変わったかのようだった。今もショートヘアは続けている。がんを経験したことで、イメージチェンジすることができたのかもしれない。

 現在もホルモン治療は続けているので、主治医の先生からは完全に治ったとは言ってもらえない。しかし、自分の体と向かい合うためにも必要な経験だったと、今は思える。

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