がん検診で見つかった乳がんステージ1。手術や放射線、抗がん剤、ホルモン療法――その一つひとつの選択には、想像以上の迷いや葛藤があったという。今回は、乳がんを体験したライターが病気と向き合った日々と治療にまつわるリアルを明かす。

» 「何の症状もなかった」早期発見のきっかけ
» ステージ1、しこりの大きさは12mm
» 手術は診断から1カ月後。信頼できる医師とともに
» 退院、そして「治療の始まり」
» お金の心配を払拭してくれた「高額療養費制度」
» 加入していた保険が支えになった


「何の症状もなかった」早期発見のきっかけ

 乳がんの告知を受けたのは、2021年11月22日。なんとなくそうかもしれないと思っていたものの、何の症状もなかったので、信じがたい気持ちだった。

 その少し前に、40代後半で定期健診で区の乳がん検診を受けていた。2年に一度の定期検診だ。マンモグラフィー、エコー(超音波)、触診――。検査を受けるなかで、前回とは少し違う空気を感じた。

 特にエコー検査では、技師の方が無言のまま何度も同じ箇所を確認している。前回は「とてもきれいですね」と声をかけられ、すぐに終わったことを覚えていたから、今回はただならぬ様子を感じ取った。

 診察した医師も「何か触れるものがあるが、他の検査結果も見て判断します」と淡々と話し、深刻そうな雰囲気ではなかった。

 1週間後、触診を担当した医師から電話があり、「検査結果をお伝えしたい」とのこと。

 翌日に受診すると、「乳がんの可能性が高い」と伝えられ、紹介された大きな病院で精密検査を受けることになった。

 そして「針生検」を実施。超音波で位置を確認しながら針を刺し、細胞を採取する検査だ。局所麻酔をして行うとはいえ、やはり緊張した。

 結果を聞いたのは、それから約12日後。すでに「おそらくそうだろう」と覚悟していたはずなのに、実際に「乳がんです」と告げられると、頭の中が真っ白になり、ただぼんやりと時間だけが過ぎていった。

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