マレー半島とボルネオ島北部にまたがる常夏の国、マレーシア。実はこの国、知る人ぞ知る美食の国なのです。そこでこの連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。多様な文化が融け合い、食べた人みんなを笑顔にする、とっておきのマレーシアごはんに出会えますよ。

地味な見た目を裏切る濃厚「カヤトースト」!

サクッと焼き上げたパンに、甘いカヤジャムとバターをサンドした「カヤトースト」。マレーシア人が好むコピ(甘いコーヒー)やテタレ(甘いミルクティー)と一緒に食べる。

 今回ご紹介するマレーシアごはんは、南国の甘さをほお張る「カヤトースト」です。マレーシアやシンガポールで朝ご飯や軽食として広く食べられている、甘くて素朴な味わいが人気の「カヤジャム」をはさんだトーストなのですが……、ふむふむ、見た目は普通のトーストですね……。

 この「カヤトースト」にはさんであるのは、甘くて濃厚な「カヤジャム」。ジャムと言うと、果実が入ったフルーティーな味わいをイメージするかもしれませんが、カヤジャムはココナッツミルクと卵をベースに作られており、その豊かな味わいから「南国のカスタード」とも言われています。お皿に盛られたその地味なトーストの見た目とは裏腹に、ひと口かじれば、濃厚なカヤジャムの味わいに誰もがとりこになること間違いなしな、マレーシア的モーニングの鉄板メニューです!

左:たっぷりの卵とココナッツミルクに砂糖を加え、煮詰めて作るカヤジャム。手作りにこだわる店も多く、甘さやペーストの濃さもそれぞれ特徴がある。
右:トーストに添えられているのがバターとカヤジャム。トーストに塗られてサーブされるタイプのほかに、このようにカヤジャムがお皿に添えられ、好きな量を塗ることができるタイプもある。

 「カヤ」はマレー語で「豊かな」とか「リッチな」といった意味。卵とココナッツミルクが織りなす濃厚でコクのある味わいは、南国の人達にとってはカスタードクリームのような贅沢な味なのです。では、マレーシアで味わえる「カヤトースト」や「カヤパン」をご紹介しましょう。

2015.11.27(金)
文=三浦菜穂子
撮影=三浦菜穂子、古川 音