辛み、香り、まろやかさの三拍子がクセになる! もちもちのアジア麺「ドライ・チリパンミー」
パンミー無くして、マレーシア生活は語れず――。マレーシアで暮らした4年間、友人から「またパンミー食べているの?」と呆れられていたほどパンミーにハマっていた私が、今もっともテンションの上がる店がここ。
日本で多分唯一、自家製麺のパンミーを提供している「ジャパンミー」です。
パンミーとは、漢字で「板麺」と書き、小麦粉の生地を板のように延ばして作るマレーシアの中国系の麺料理。現地ではスープとドライ(まぜ麺)の2つのタイプがあり、「ジャパンミー」で提供しているのは、タレを混ぜて食べるドライタイプ。なかでも、香ばしく煎ったチリフレークの辛み、それを温泉卵のまろやかさが包み込むやみつき系「ドライ・チリパンミー」を味わうことができます。
さぁて、着麺! 豚そぼろ、ジャコ、干し海老、温泉卵、青菜など、麺が見えないほど具だくさん。
お、お、おいしい! もはや感動を通りこしてむせび泣きしそうです……。全体的に現地よりも上品な味。というのも、コロナ禍の影響でマレーシア産の食材を手に入れることが難しくなり、それならばと、すべて日本産の食材で組み立てているから。
たとえば、麺にはグルテン含有量が抜群に高い北海道産の小麦粉・ゆめちから。具には豊洲市場の目利きから仕入れる国産のジャコ。
マレーシアは気温30度を超える常夏なので、塩味がしっかりした塩干しの小魚イカンビリスが好まれるのですが、塩分より香ばしさメインのジャコにすることで、四季のある日本でも毎日食べられる味に。
「何度も試作を重ねて発見したのは、パンミーのような地元で愛される料理は、その土地で採れた食材で作ったほうがいい、ということ。そのほうが、食後の満足感も含めて、現地の味に近づくのです。ただ、麺のもちもち感は現地以上の自信があります」とゆきちゃん。実際、週末ともなると、日本で暮らすマレーシア人が遠方から訪れ、懐かしい味と喜んでくれるのだそう。
もう一つの工夫が、辛み。マレーシアのチリパンミーは、唐辛子を炒めて作るチリフレークをかけて食べるのですが、これだと日本人にはちょっと辛すぎる。そこで、チリフレークはあくまでもオプションにし、その代わりにタレとしてかけたのが「サンバル」。マレーシア料理に欠かせない万能調味料です。
さらに、もう一つのこだわりが、麺の下にひっそり潜んでいる甘いタレ。江戸前鮨の名店「新ばし しみづ」の穴子の煮詰めに、黒穴子から取った自家製ダシを加えたもので、マレーシアで使われているケチャップ・マニス(大豆ベースの液体調味料)の代わり。深みのある甘さが味をまろやかに、食後はなぜか安堵にも近い幸福感に満たされるのです。
2022.07.04(月)
文=古川 音(マレーシアごはんの会)
撮影=田中じゅん、伊能すみ子