どうしたらいいのか考えることも自然とともに生きるということ

――畑をはじめたのは、どんなきっかけだったんですか。

「父と姉が管理していた畑を、4年くらい前からわたしが引き継いだんです。4年たって、ようやく今年は野菜がすごくじょうずにできて。何かを育てるのって大切な経験ですよね。自分も自然の一員として暮らしていけてる、って実感しました。しかもその野菜をおいしいって食べてくれる人がいる。こんなうれしいことはないですよね」

――都会にいると、選択肢がないわけではないのですが、容易にできないという問題もある気がします。

「そうですね。たとえばコンポストも、都会で暮らす方にはパッグ型のものが結構広まっていますが、堆肥にしたところで使い道がなくて、土を持て余してしまって、せっかくできたいい土をゴミに捨てちゃう人もいると聞いたことがありますね。すべて個人で担うのではなく、商店街で集めたり花壇を作ったり、いろいろなサポートがあったらいいですよね」

――暮らしを変えるには、町や地域の協力も欠かせないですね。

「2012年に地元の女性たちが台所からの地球再生をテーマに掲げた団体『リジェネレーション フロムキッチンオーガニゼーション(通称リジェネコ)』を立ち上げたのですが、私もそのメンバーとして活動しています。
台所からの地球再生という意味ですけど、堆肥の勉強会をしたり、パーマカルチャーデザインを教えていただいたりしています。みんなでやると、仲間で一緒に盛り上げていけて楽しくやれますよね。都会でもそういう活動があるといいのかな」

――山戸さんは、タネを守る活動もされていますよね。

 「農家さんと直接やりとりすることが増えてきたときに、在来種や固定種という、その土地に根付いた野菜のタネがあることを知ったんですよ。日本はタネと肥料を含めると、食料自給率はゼロに近いんです。なので、自分のところで育てた野菜からタネをとって、また次の年に使う、ということをはじめています。でもそれって昔は当たり前のことだった。そうやってずっと繋いできた歴史があるんですよね。

 もちろん、時代に合わせて変わっていかなきゃならないところもあるし、変に固執するのではなく、柔軟であることも大事だなと思っています。何を変えていくべきなのか、変えてはいけないものは何なのか、そういうことに考えを至らせてくれるのも、自然とともに生きるということなのかなと思います」

 山戸さんの暮らしは、人と自然とがシームレスに交わり、自由に暮らせる環境にありました。

 時代や環境の変化に合わせて、人が変わっていくべきことを見定めつつ、地球を循環させながら生きていく。都会に住むわたしたちにも、小さなことからでもできることがあるかもしれません。山戸さんのライフスタイルを参考に、身のまわりで何ができるのか、今年は考えてみるのもいいかもしれません。

DILL eat,life.

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2025.02.26(水)
文=吉川愛歩
写真=寺澤太郎(ポートレート)