この記事の連載

◆パイナップル/国産グレープフルーツ/スパイス

 約15種類にものぼる多彩なパーツを細やかに重ね、多彩な味わいや香り、食感のハーモニーを打ち出した「季節のパフェ」は、常時2種類。

 夏に差し掛かり、蒸し暑さが増してきた季節に登場したのは、「パイナップル/国産グレープフルーツ/スパイス」です。主役となるフルーツは、ジューシーで甘く、桃のように香りのよい白い果肉の沖縄県産ピーチパインと、酸味が少なく甘みがしっかりとした沖縄産スナックパイン、苦みと酸味、食感が心地いい愛媛県産のグレープフルーツです。

 トップにのせられたスナックパインのソルベには、クレーム・シャンティイ、フレッシュなスナックパインとピーチパインとともに、沖縄県産コリアンダーのチュールとスターアニス、レモングラスがあしらわれ、南国気分いっぱい。

 そのまわりを、ピーチパインのスパイスロティ、フレッシュなグレープフルーツと2種のパインがごろごろと囲み、中には苦みと青々しい香りがさわやかなバジルとグレープフルーツのグラニテが隠れています。

 それを支えるのが、ごく薄く仕上げたアールグレイのクレーム・ブリュレと香ばしいヌガティーヌ。芳しい香りと食感がアクセントを添え、グラスの中へと続く味わいのハーモニーへと誘(いざな)います。

 次に現れるのは、甘やかでありつつすっきりとしたココナッツとレモングラスのジェラート。その下に敷かれたポップとフェンネルシードのシュトロイゼルを噛み締めると、ホップならではの苦みがじわじわ広がって、フェンネルシードが後口をすっきりさせます。

 最後は、チャイのシロップでコンポートにしたピンク&ホワイトグレープフルーツ、それぞれに食感の異なるライチとグレープフルーツのジュレと、アールグレイとカルダモンのジュレが香り豊かに調和。複雑味がありつつ清々しい余韻が、後を引きます。

 「夏が近づくとスパイスが効いたカレーを食べたくなりますし、ビールも飲みたくなります。そんな気分を、このパフェに込めました。スパイスを随所に散りばめて、フルーツのフレッシュ感と混じり合って生まれるおいしさを意識してつくっています。グレープフルーツの苦みが、パイナップルの甘さを引き立て、スパイスがグレープフルーツやホップの苦みを心地よさに変えてくれます」と、石内さん。

「おそらくフルーツを買っても、お家で焼いたり、コンポートやソルベにしたりして食べようという人は、なかなかいないですよね。だからここでは、お家での食べ方とは違う新しい食感や味わい、味の組み合わせを楽しんでいただきたいと思うんです」

 パフェにはおすすめのペアリングドリンクも必ず1種類提案され、「パイナップル/国産グレープフルーツ/スパイス」には、スパイスの効いた「チャイ」を。パフェに散りばめられたスパイスにそっと寄り添い、味わいの奥行きと香りの余韻をさらに深めます。

2024.06.26(水)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵