●ひたすら悩みながら演じた難役

――現在放送中の朝ドラ「ブギウギ」ではUSK(梅丸少女歌劇団)の専属ピアニスト・股野義夫役を演じられている森永さんですが、これまでも「芋たこなんきん」(07年)、「ウェルかめ」(09年)、「べっぴんさん」(17年)といった朝ドラにも出演されていました。ご自身の中での心境の変化は?

 僕自身が変わったという感覚は、あまりないですね。ただ、僕が「ブギウギ」に出演したときに、「芋たこなんきん」の話をしてくれる視聴者の方がいることが凄いですし、嬉しいなという気持ちですね。まるで親戚の子を見るような目線で、僕を見てくれていることに温かさを感じます。

――「花燃ゆ」のように、実在した人物をモデルにした役作りはいかがでしたか?

 今回はとにかく、もうピアノのことで頭がいっぱいでしたね(笑)。役作りは、いちばんの情報源である台本に書いてあることと、あとは演出の方とお話しすることで、キャラクターを作っていきました。

 僕自身、事前に何か作っていくというより、できるだけニュートラルな状態で現場に行って、演出の方と話したりすることで、役を構築していくことが多いと思います。

――そして、最新出演作『市子』では、失踪した杉咲花さん演じる市子の高校時代の同級生で、大きなカギを握る北秀和役を演じられています。これまで森永さんが演じられてきた役とは異なる一面も見られますね。

 最初は、そこまで思っていなかったんですが、実際やってみるうちに、「普段とは違った役の捻り出し方をしている」ということに気づき始めました。

 猛暑の中、かなりシリアスな内容なので、ひたすら悩みながら演じた記憶がありますが、同じ時期に別作品の撮影もしていたので、「苦しいな、苦しいな」と思いながら、気持ちを強制的に切り替えていました。

 今回も戸田彬弘監督と相談しながら、というところは多かったのですが、言葉として聞いていても、僕の受け取り方と戸田監督の受け取り方が違うこともあるので、細かく何度も擦り合わせていきました。

2023.12.08(金)
文=くれい響
撮影=三宅史郎