●今後はいろんなジャンルに挑戦したい
――作品を観ると、鈴木清順監督作のような荒唐無稽さに、ゴダール監督作のような編集などから、おバカコメディの枠を超越した作家性を感じます。8月に公開された池袋シネマ・ロサでの上映は満席が出るほど好評を博し、来年1月の凱旋上映が決定。大阪・愛知・長野での上映も経て、映画祭などでの上映も続々決定しています。
インパクトが強すぎるタイトルや予告編のイメージをどんどん裏切っていく作品なので、シネマ・ロサ以外のところで公開するときは、未だに緊張しますね。完成したときは「こんな映画を受け入れてくれる人はいるのか?」という気持ちだったので、結果的にお客さんがいろんな観方をしてくれたり、口コミで上映する場が広がったり、応援上映イベントができたことは、自分たちの想像を超えたものでしたね。
この映画の元ネタの一つである野球マンガ「男どアホウ甲子園」の原作者、佐々木守さんが「日本中の青春が、みんなどアホウになれたら素晴らしいな、と思ってこの原作を書いた」とコメントされているんですが、今ではそこに通じる“観た人がどアホウになる力”がこの映画にあるように思えてきました。
――今後の展望や希望について教えてください。
さすがに、この状況に戸惑ってばかりもいられないので、まずはこの『野球どアホウ未亡人』を、さらに全国に広めて、多くの人に観てもらいたいですし、いろんなところからご厚意でいただく取材などのお話には、積極的に乗っかっていきたいと思っています。敬遠しがちなタイトルかもしれませんが、強い女性を描いた作品なので、女性の方にも観てもらいたいです。
今後はバカ映画にとらわれ過ぎず、いろんなジャンルに挑戦したいです。憧れの存在は、鈴木清順監督や黒沢清監督、勝手に「師匠」と呼んでいる河崎実監督。ただ、これまで両親やいろんな人に迷惑をかけてきたので、自分のお金で映画を撮るのではなく、「これぐらいの予算で、こういう作品を撮りませんか?」というお話をしてくださるプロデューサーさん、お待ちしています!
小野峻志(おの・たかし)
1996年7月10日生まれ。埼玉県出身。日本大学芸術学部映画学科在学中に、堀雄斗らとともに「カブ研究会」を立ち上げ、映画制作を始める。19年、卒業記念の短編『拾って捨てろ!』が「第5回新人監督映画祭」に入選。23年8月に、池袋シネマ・ロサにて公開された長編2作目『野球どアホウ未亡人』がSNSを中心に大きな話題を呼び、インディーズ映画界の台風の目になりつつある。
映画『野球どアホウ未亡人』
夫の賢一(秋斗)が亡くなり、草野球チーム「多摩川メッツ」の監督・重野(藤田健彦)に野球の才能を見いだされた夏子(森山みつき)。賢一の残した借金を返済するため、草野球の投手を務めることになった彼女は、重野の激しい特訓を重ねるうちに、野球の快楽性にとりつかれていく。義妹の春代(井筒しま)やプロ野球スカウトマンの古田(工藤潤矢)ら一癖も二癖もある人物たちに囲まれ、夏子は新たな道を進む。
https://twitter.com/ONOKANTOKU
9月22日(金)~ 刈谷日劇にて“どアホウ”ロングラン上映中!
11月10日(金)~22日(水) 長野・千石劇場にて上映中!
11月19日(日)「第33回映画祭TAMA CINEMA FORUM」ベルブホール<永山公民館>にて上映!
12月8日(金)・17日(土)「MOOSIC LAB 2023」新宿・K's cinemaにて上映!
12月9日(土)・12月10日(日)・12月31日(日) 池袋・新文芸坐にて上映!
2024年1月1日(月)~5日(金) 神戸・元町映画館にて新春初笑い公開!
2024年1月13日(土)~26日(金) 池袋・シネマ・ロサにて都内カムバック公開!
*そして、さらなる続報を待て!!*
Column
厳選「いい男」大図鑑
映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。
2023.11.17(金)
文=くれい響
撮影=細田忠