●女性本来の強さが出た作品を撮りたい

――そもそも、「カブ研究会」の“カブ”って何ですか?

 怪獣映画を撮ることになり、内容的にはロシア民話「おおきなかぶ」をベースに、みんなで力を合わせて、引き抜いたらカブ型の怪獣だったという話を考えたんです。それでカブ怪獣のぬいぐるみを作り始めるんですが、夏休みになり、僕たちは大学非公認のサークルだったので、大学の教室が借りられず、所沢市のコミュニティセンターを借りることになったんです。

 それで、「あえて真面目なグループ名を付けた方が借りられやすいのでは?」ということになり、仮で付けたんです。怪獣のぬいぐるみは頭部だけ出来上がって、それが出てくる短編を作り始めたんですが、特撮部分だけ撮って、話が立ち消えてしまいました(笑)。

 それを供養する意味で、「カブ研究会」の第1作となる『不倫OL濡れ銀河』や卒業記念の『拾って捨てろ!』などの「カブ研究会」のロゴが出るところで、その映像を使用しています。あと、「小野峻志監督特集」の予告編にもチラッと登場していますね。

――その後、公園を清掃するボランティア団体と公園を荒らす不良集団の抗争をシニカルな笑いを交えて描いた『拾って捨てろ!』が、19年「第5回新人監督映画祭」に入選されます。

 それまで撮っていた作品も、いろんな映画祭に応募していたんですが、まったく入選しませんでした。ここで入選したことで、池袋の(映画館)シネマ・ロサの方が観てくださり、上映が決まったんですが、『拾って捨てろ!』が45分の短編だったので、(流行りの飲み物の廃絶を訴える団体の内部崩壊を描いた)『やわらかい季節』を撮り、20年の2月に「小野峻志監督特集」として一週間レイトショー上映されました。

 インディーズ映画を作るうえでは、かなり限界でしたし、劇場公開もされ、ひと段落ついたこともあり、このときは「もう周りに迷惑をかけないで、ちゃんと就職しよう」と思っていました。

――小野監督の作品は、ロマンポルノ風なタイトルとぶっ飛んだ設定である一方、一人の女性が訓練や困難を通して、次第に強くなっていく様が描かれているのが特徴的です。

 怪獣映画を撮りたくても、ぬいぐるみを作るお金もないので、「じゃあ、怪獣みたいに強い人間を撮れば良くないか?」みたいなところから始まったんですが、今の時代、『ダーティハリー』みたいなアクションを撮ろうとしたら、女性にしか託せない考えがありますし、僕も堀も、杉本美樹主演の東映映画『0課の女 赤い手錠』が大好きなので、女性特有の得体の知れない強さが出た作品を撮りたいんです。

 1作目の『不倫OL濡れ銀河』も、課長と不倫しているOLが、課長の本妻が宇宙人だったことを知り、空手の修業を通して自立していく話だったんですが、それ以降、普通の女性が周りに流されず、強くなっていく映画ばかり撮っています。

2023.11.17(金)
文=くれい響
撮影=細田忠