感情をむき出しにした男女の関係を描いた『辻占恋慕』『ウルフなシッシー』などで、映画ファンから注目を浴びる大野大輔監督。

 「ミスマガジン2022」を主演に迎えた最新作『さよならエリュマントス』でも、独自の世界観を爆発させている鬼才の魅力に迫ります。


●2本の作品を合体させ、自主映画界で注目

――高校時代から、「将来は映画にたずさわる仕事に就きたい」と思われていたそうですね?

 もともと映画好きではあったんですが、中学生の頃に雑誌「映画秘宝」と出会い、いろいろな作品を観るようになりました。そして、高校で映画部に入り、部員が書いたシナリオを役割分担して、自主映画を撮り始め、本格的に映画を勉強したかったこともあり、大学に進学しつつ、並行して映画美学校に通いました。そこで、編集のやり方を学べたことは、とても大きかったです。

――その後、映画制作チーム「楽しい時代」を結成し、美学校の修了制作として初監督作となる『BAD SAMURAI FOREVER』(2013年)、そして『さいなら』(15年)を手掛けられます。

 何か屋号みたいなものが欲しかったので、映画制作チームを名乗ったんですが、実質は僕一人でやっていました。ただ、幕末を舞台に撮った『BAD SAMURAI FOREVER』を観た人の反応があまりにひどくて……。

 その後、自虐ネタを使ったドキュメンタリー・タッチの『さいなら』を撮ったら反応が良くて……。それで、再利用ではないですが、2本を合体させた『さいなら、BAD SAMURAI』を作りました。

――そんな『さいなら、BAD SAMURAI』は、16年の「カナザワ映画祭」でグランプリを受賞。一躍、自主映画界で注目を浴びます。

 とても有難いことですが、たまたま映画祭の方が気に入ってくださったものだと思っています。その後、『さいなら、BAD SAMURAI』の自主上映会をやろうと思ったんですが、上映時間が60分ぐらいしかないので、なにかもう一本、カップリングの作品として作らなきゃいけないと思いまして。それが『ウルフなシッシー』になりました。

2023.08.11(金)
文=くれい響
写真=平松市聖