●俳優として、自身が出演する理由
――ちなみに、『ウルフなシッシー』の監督役や『辻占恋慕』のマネージャー役など、大野監督は俳優として、メインの役どころを印象的に演じられています。
これといった演技経験はないですが、たとえば『さいなら、BAD SAMURAI』など、低予算でやるときは、自分でやらざるを得ないわけですし……。
スケジュール変更などで迷惑をかけることになったり、リスクを軽減する意味では、シナリオも書いている自分がやった方がいいかも?という感じですかね。『辻占恋慕』に関しては、最初から自分が演じる想定で、シナリオを書いていました。
――そして、アクション・エンタテインメント『ヒットマン・ロイヤー』を経て、「ミスマガジン2022」を主演に迎えた最新作『さよならエリュマントス』を撮られます。表向きはアイドル映画ですが、解散寸前のやさぐれたチアリーダーチームと訳アリなマネージャーの関係性などを描いており、まさに大野監督のテイストといえます。なぜ、チアだったんでしょうか?
「ミスマガジン」の6人をメインにする場合、何かのユニットに落とし込んだ方がいいと思い、チアリーダーチームになりました。そして、「ミスマガ」のみなさんとご面談させていただき、シナリオを書いていったので、それぞれの見せ場みたいなものも均等に作ることを心がけました。
あと、演技が初めての子もいると聞いていたんですが、軽く台本読みしてもらったら、まったく心配はありませんでした。最初は『カリフォルニア・ドールズ』みたいな路線をやりたいと思っていたんですが、最終的には、それとはだいぶ離れていきました。
――これまで手掛けられてきた作品との大きな違いは?
やはり、ダンスシーンですね。また、これまでの作品と比べると、大変じゃないことの方が多かったです。そして、この作品を撮ったことで、僕の中で「求められるニーズがあるなら、どんなジャンルの作品も撮っていきたい」という気持ちがさらに強まりました。自分で1から作る作品は、なかなかキツいものがありますから。
2023.08.11(金)
文=くれい響
写真=平松市聖