この記事の連載
東村アキコインタビュー #1
東村アキコインタビュー #2
翻訳の壁をひらりとかわして
![オリジナル版では「SORAが熱愛!?」のセリフが翻訳されるとこのように変わる(右上:韓国語、左下:フランス語 右下:英語)。言語の壁はあるものの、東村さんが翻訳を意識したネーム作りをしているので多言語化しやすいのだとか(第1話より)。 ©2020-2022, Higashimura Akiko, neostory, All rights reserved.](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/9/1280wm/img_b9154414d6dd3032d6d67de0f1f72999193738.jpg)
とはいえ、『わたおぼ』制作時はこんな苦労もあった。
「昔は感覚的に、キャラクターにセリフを言わせていましたが、縦スクでは一瞬で頭に入ってくるセリフ回しや間の取り方を心がけました。日本特有の言い回しや流行り言葉も極力使わないようにしています。最近、昔の自分のマンガを読んでみたら、往年の名俳優の名前を使ったギャグがあったのですが、それだとまず他言語に置き換えることができない。縦スクを始めた頃は、固有名詞ギャグとかがないと、内容が薄くなるというか、読者が物足りなく思うのではと思っていましたが、なきゃないですっきりしていいんですよね。これは縦スクをやってみて学んだことのひとつです」
![『東京タラレバ娘』(講談社)が2019年米国アイズナー賞の最優秀アジア作品賞を受賞したときのトロフィー。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/1/1280wm/img_b14d0e5cf19f2a63cd596f71242ff2b5114020.jpg)
世界を意識する一方で、「時代の気分を紙に落とし込むのがマンガ」とも語る東村さん。そのために心掛けていることは?
「私は今年で47歳になりますが、同世代の編集者や知人がよくお酒の場で昔の話をするんです。そして、若い人が好きだという音楽や映画に対して、『あれって〇〇の焼き直しだよね』みたいな発言をしがちで。もちろん昔のカルチャーは私を構成している要素ですし、今でも好きなものは好きですが、『あいみょんが好き』って子に、『昔はりりィって歌手がいてね』と言ってもしょうがない。私もつい言っちゃうんですけど(笑)。それを止めたいなと思って、ある時から今流行っているものを観たり聴いたりしようと決めたんです。そうしたら、圧倒的に今のものの方がいいし、若い子と共通の話題で盛り上がれる。いいことづくめなんです。
今、講談社漫画賞の審査員をやっているので、マンガも流行っているものはひと通り読んでいますが、最近のマンガって本当にすごい。特に少女マンガ。みんなどうしてこんなに絵が上手いの? どうしてこんなに男の子がカッコいいの!? と思います」
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2022.09.19(月)
Text=Mao Yamawaki
Photographs=Wataru Sato
CREA 2022年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。