ストーリーに“笑い”という共通点があるマンガ家・和山やまさんとつづ井さん。つづ井さんの熱い和山作品分析を皮切りに、アイディアの種や制作の裏舞台などを語り合います。

»「『和山やまさんの魅力100個言えます』つづ井さんがマンガ家視点で徹底解説」を読む


突如としてプレゼンが始まる

 『女の園の星』『カラオケ行こ!』の和山やまさんと『裸一貫! つづ井さん』のつづ井さん。ふたりの作品が放つ幸福感はどこから来るのか、初対面で探り合いました。

つづ井 私、和山先生の古参ファンだと思ってるんです。pixiv(コミュニティサイト)で見た『うしろの二階堂』(『夢中さ、きみに。』収録)、だいぶ初期にリツイートしたけどね私、みたいなノリで応援させてもらっています。

和山 ありがとうございます。その前から商業誌で読み切りなどは描かせてもらっていたんですが、全く反響がなかったんです。そこで、編集者さんの目を完全に無視して、趣味全開で好きなものを描いてpixivにアップしたのが『うしろの二階堂』でした。

つづ井 その時点で完成度がとんでもなかったので、「これは来るね。ハネるね」と思っていたから「ほらね!」と。この才能をいち早く見つけたのは自分だと思っている人、ざっと数万はいると思うんですけど(笑)。それで……いきなりなんですがプレゼンしていいですか?

和山 えっ!?

つづ井 私、和山先生の好きなところを100個言えると思って。ご迷惑にならないよう論点をギュッと絞って、スケッチブックにまとめてきました。5分ほどで終わると思いますので、喋ります。まず一つ目は「絵がゴイゴイス」。

 (詳細は「和山やまさんの魅力100個言えます」の記事を参照。10分が経過し)ということで長々と喋らせてもらったんですけど、一番の思いは、「こんなに素敵な感性と才能と実力をお持ちの先生が、これからも健やかに過ごしていかれますように」。と、全国のファンを勝手に代表するつもりでお伝えします。ご清聴ありがとうございました。

和山 (声を震わせながら)ありがとうございます。途中から泣きそうになってしまいました。そちらのスケッチブック、いただけるものなんでしょうか。仕事部屋の壁に貼りたいです。原稿がしんどいときに見たら、頑張れそうな気がします……。

つづ井 これ、どこで燃やそうかと悩んでいたので、嬉しいです。

日常の見落としがちな面白さを描いているつもりです─和山

つづ井 和山先生の作品を読んでいると、「あるある!」ってなるんですよ。卒業写真で肩にクワガタを乗っけている話とかは、ありそうでなさそうなんですけど(笑)。それと同時に、「なんでこれが分かるんだろう?」「よくこれをマンガに描こうと思ったな!」という感覚になることが多いんです。例えば『女の園の星』の1巻で、星先生と小林先生が居酒屋に行ったら、声がめちゃめちゃ通るってエピソード。小林先生の〈この職業柄声通るようになりません?〉ってセリフ、絶対そうだってなりました。

和山 嬉しいです。

つづ井 こんなところに気づいて描写する人を私、見たことないなと思って。1巻に出てくる、犬に眉毛を描いた生徒は挙手しなさいってシーンは感動しました。全員が手を挙げている後ろの黒板に、マグネットで顔が作られているんですよ。学校にいた頃こういう遊びやったわってなるんですけど、そのコマを見たから思い出しただけで、完全に忘れていたんです。本当に些細なことじゃないですか。あれは何を思って描かれたんですか。いつか描いてやろうと思って、記憶しておいたものなんですか?

和山 そのコマの黒板を描いているときに、こういうことあったなぁと思い出したんです。ネーム(コマの構図など)を描いているときは全然思い出せないんですが、原稿を描いていると「そう言えば、ロッカーの上に雑誌とか置いてあったな」となることが多いです。

つづ井 和山先生がマンガに描くことで、あったなぁって思い出して、改めてその面白さだったり、そういうことをする高校生の愛しさみたいなものを再認識できるんです。最高です。

和山 つづ井さんが今言ってくださった通り、私は日常の中にある見落としてしまいがちな面白い部分を、ピンポイントで描いているつもりなんです。おこがましいんですが、つづ井さんのマンガも発想が似ているというか、作品から出ている匂いは一緒かもしれないと思っていました。

『女の園の星』和山やま

生徒たちの絵しりとりに頭を悩ませ、漫画家志望の生徒にアドバイスし……。とある女子校の国語教師・星先生と、同僚教師&生徒たちの日常を描く。「FEEL YOUNG」で連載中。
祥伝社 各748円 既刊2巻

2022.09.18(日)
Text=Daisuke Yoshida
Photographs=Asami Enomoto

CREA 2022年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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