女性の本音に寄り添ったヒット作を次々に生みだす一方で、いち早く縦スクロールマンガに挑戦し、今年はNFTへの進出も! マンガ界の最先端を走り続けるマンガ家の東村アキコさんが今、立つ場所とは? CREA2022年秋号「夜ふかしマンガ」特集掲載のロングインタビューを2回に分けて全文公開します。今回は後篇です。
» 東村アキコの現在地【前篇】縦スク、グローバル展開、NFT…マンガで時代の最先端を行く! を読む
令和の美人画でNFTに挑戦
芸能プロダクションに劇場経営と、これまでマンガの枠を越えた活動も行ってきた東村さんが、今年、また新たな地平にチャレンジするという。それは、現代の美人画をNFTで発表するというもの。
「金沢美術工芸大学で油絵を専攻していた頃、よく美人画を描いていたんです。デビューしてから忙しくなってファインアートからは離れてしまったのですが、いつかまた美人画を描きたいと思っていたんです。そうしたらコロナ禍で時間ができて、着物にハマっていたのと、5年ほど前からお茶を始めたのとで、姉弟子の着物姿を描いてみました。着物って、江戸時代、明治、大正、昭和で着姿が全然違っていて、今もまた違う。そんな令和の着こなしを残しておけたらとせっせと描きためていたら、『NFTというものがあるけれど、興味はないですか?』というお話をいただいたんです」
NFTは、ブロックチェーン上で管理されているデジタルデータだが、区別可能な識別子を持つ唯一無二のデータでもある。
「昔から、絵を買った人が蔵にしまい込んでしまったら、私はその絵が見られないんだと思っていました。そういう所有の仕方って、ちょっと今っぽくないというか。また、昔の人はいろんな人に見てもらうべく浮世絵を版画にして摺った訳ですけど、コピーライトとナンバリングを入れて複製できるNFTも現代の版画のようなもの。私はマンガ家ですから、できるだけ多くの人に絵を見てもらいたい。ですから、NFTと私はウマが合うんです。これで儲けようとかは全くないですよ? そもそも、その辺りのからくりが全く分かっていないので(笑)」
2022.09.19(月)
Text=Mao Yamawaki
Photographs=Wataru Sato