この記事の連載
CREA夜ふかしマンガ大賞に作品を推薦してくださった35名の皆さん。最愛の一作や読書スタイルとともに、マンガ愛に溢れた回答を6回に分けて紹介します。
» 鶴谷香央理さん[マンガ家]
» 永田 希さん[著述家・書評家]
» 凪良ゆうさん[作家]
» 深緑野分さん[小説家]
» 牧野麻紀子さん[アニメイト書籍担当]
» 八木 泉さん[ジュンク堂書店三宮店コミック担当]
鶴谷香央理さん[マンガ家]
Q1:最愛の一作
『黄色い本』(高野文子/講談社)
初めて読んだのは大学生のときでした。フィクションに夢中になること、それが日常に覆いかぶさってくることを描いているだけなのに、描き方ひとつでこんなに読者を引き込み、体感させ、感動させることができるのかと、今でも新鮮な驚きがあります。
Q2:マンガを読むスタイルは?
紙と電書、どちらも読みます。たいてい朝の喫茶店でか夜寝る前ですが、たまにのめり込んで昼夜読み続けることもあります。
Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由
『HEARTSTOPPER ハートストッパー』(アリス・オズマン/トゥーヴァージンズ)
嘘のなさと優しさが奇跡のように同居していて、登場人物全員を抱きしめたくなります。
『光の箱』(衿沢世衣子/小学館)
あの世とこの世の間にあるコンビニに集う人たちはクールだけど優しい。現代社会の問題を捉えつつハラハラするアクション展開もあり、これぞエンタメという作品です。
『真夜中の訪問者』(ハトリアヤコ/KADOKAWA)
Q4:各部門への推薦作品とその理由
●お仕事部門
『東京心中』(トウテムポール/茜新社)
働くことの光と闇がどちらもきっちり描かれていて、自分もしばらくテレビ業界で働いたような気になりました。
●胸キュン部門
『あなたはブンちゃんの恋』(宮崎夏次系/講談社)
恋愛のままならなさをまっすぐ見つめた作品。
●家族部門
『コットリコトコ』(おくやまゆか/小学館)
当たり前だけど、一人ひとり別の人間が集まって家族なんだということの、温かさと淋しさがユーモラスに描かれています。日常の中に宝石がある。
●グルメ部門
『三つ星シェフの味付けの魔法』(クリストフ・ブラン/エクスナレッジ)
料理も、それを作る人、食べる人も全部小さな絵で描かれているのに、湯気や香りが漂ってきて、未知のおいしさが口に広がる気さえする。本当に魔法のような作品です。
鶴谷香央理(つるたに・かおり)
マンガ家
『おおきな台所」でデビューし、同作で第52回ちばてつや賞準大賞を受賞。初の単行本『メタモルフォーゼの縁側』(KADOKAWA)でも数多くの賞を受賞している。
鶴谷香央理さん最新作
『メタモルフォーゼの縁側 映画記念BOXセット』
話題になった映画「メタモルフォーゼの縁側」の世界。どこまでも優しいこの物語の原作コミックス全5巻を描き下ろしのイラストであしらった特製BOXに。映画の感動の余韻を味わうために読むにも最適なアイテム。KADOKAWA 3,300円
2022.12.14(水)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)