この記事の連載
CREA夜ふかしマンガ大賞に作品を推薦してくださった35名の皆さん。最愛の一作や読書スタイルとともに、マンガ愛に溢れた回答を6回に分けて紹介します。
» 粟生こずえさん[編集者・ライター・作家]
» 彩瀬まるさん[作家]
» 有吉由妃さん[QPS研究所PRマネージャー]
» 井口啓子さん[ライター]
» 犬山紙子さん[イラストエッセイスト]
» 梅本ゆうこさん[ブログ「マンガ食堂」管理人]
粟生こずえさん[編集者・ライター・作家]
Q1:最愛の一作
『パタリロ!』(魔夜峰央/白泉社)
小学5年生のとき、書店でなんとなく手に取って「これは自分の(読むべき)マンガだ!」と直感しました。それまでにも好きなマンガはたくさんあったのですが、繊細な美しさとデフォルメが混在した画面、ミステリ的なストーリーと諧謔に夢中になりました。少年愛や推理小説の古典についてなど、ここで得た知識も多く、いろいろな面で影響を受けていると思います。
Q2:マンガを読むスタイルは?
紙の単行本が中心ですが、最近は手に入りにくかった古い作品も電書化されていてありがたいです。マンガアプリも活用していて、毎日決まった時間にチャージが完了し、無料で読めるサイトなどは、一日のリズムをつくるのにも一役買っています。たいていは家で読んでいます。雑誌は新作や新人チェックのためにランダムに買っていますが、これはお風呂で読むことが多いです。雑誌であれば、ふにゃふにゃになっても捨てられるので。
Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由
『まじめな会社員』(冬野梅子/講談社)
作者の現代を解読する思考力に感服。みんな愚かで、みんないい!
『ファッション!!』(はるな檸檬/文藝春秋)
『ブランクスペース』(熊倉献/ヒーローズ)
Q4:各部門への推薦作品とその理由
●女の人生部門
『ブスなんて言わないで』(とあるアラ子/講談社)
ブスと美人、それぞれの内心を描くスタイルが読ませます。「ブス=被害者=正義」ではなく、美人の梨花にいじめられていた知子が、美人への偏見から極端な思い込みをしていたり、イケメンに秒でときめいて〈私としたことが……イケメンにときめくなんてルッキズム以外の何ものでもないよ〉と慌てるところなど、ちょっとしたシーンにもハッとさせられます。
●お仕事部門
『左ききのエレン』(かっぴー 原作/nifuni 作画 集英社)
恐怖を覚えるほどのすさまじい緊張感。「戦う」みたいに物騒な言葉を持ち出さなきゃならない仕事のやり方を全肯定するわけではないんですが、それが必要なこともあるなぁと。本気になる怖さと楽しさを伝えてくれます。
●戦争部門
『昭和天皇物語』(半藤一利 原作/永福一成 脚本/能條純一 作画 小学館)
昭和天皇の幼少期からを語り起こす形で昭和史をひもとく大作。最新巻では五・一五事件が描かれ、キナ臭さが……。日本がなぜ第二次世界大戦に向かっていったのか、多角的に見渡すためにうってつけの作品です。
粟生こずえ(あおう・こずえ)
編集者・ライター・作家
マンガレビュー、マンガ家インタビュー多数。本を読むのが習慣の自称“読鬼”。不定期でブックトークイベントや蔵書を放出する「おもしろ古本市」を開催。
2022.12.10(土)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)