この記事の連載
梅本ゆうこさん[ブログ「マンガ食堂」管理人]
Q1:最愛の一作
『おかめ日和』(入江喜和/講談社)
ぽっちゃり&のんびりした「おかめ」のような妻と、役者のように男前だけど超偏屈な夫。下町の日常ものかと思いきや、夫婦の馴れ初め編から「人生」そのものを描く怒濤の展開に。連載終了後も「亀田家」のみんなに会いたくて、つい読み返してしまいます。
Q2:マンガを読むスタイルは?
本棚が溢れてからは、ほぼ電子書籍に。週末のまとまった時間に、タブレットなどでゆっくり読むのが至福です。
Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由
『竜女戦記』(都留泰作/平凡社)
歴史もののリアルさと残酷さ、ファンタジーの世界観、両方の魅力を併せ持った作品。和製「ゲーム・オブ・スローンズ」を目指した、という作者のコメント通り、先の読めない展開は、深夜に見る海外ドラマのような面白さです。
『まじめな会社員』(冬野梅子/講談社)
『輝いていないサブカル女子』の心をダイレクトにえぐってくる。
『セクシー田中さん』(芦原妃名子/小学館)
ネガティブな気持ちが増幅しがちな夜に灯をともしてくれるような作品。
Q4:各部門への推薦作品とその理由
●女の人生部門
『恋じゃねえから』(渡辺ペコ/講談社)
表現する側が抱える暴力性に踏み込んだ挑戦的な作品。フィクションやアートを楽しむ側としても問題を突きつけられるテーマで、痛みを感じつつ読んでいます。
●胸キュン部門
『ゆりあ先生の赤い糸』(入江喜和/講談社)
「かっこよく生きる」を信条として生きていた50代のゆりあ先生を襲う、数々のトラブル。そしてその先の展開が、「大人の少女マンガ」としかいえないのです。リアルすぎるからこそキュンキュンして、泣けるほど切ない。ぜひ体験してください。
●家族部門
『転がる姉弟』(森つぶみ/ヒーローズ)
ステップファミリーとなった姉弟が、とまどいつつもゆっくり歩み寄っていく過程が愛おしい。
●戦争部門
『ディエンビエンフー』(西島大介/小学館)
絵柄は可愛いのに、描かれるのは戦争の狂気そのもの。ベトナム戦争を描いた映画は数多くありますが、〈中国と千年、フランスと100年戦ってきたのがベトナム〉という視点から描かれるのも新鮮。
●音楽部門
『カラオケ行こ!』(和山やま/KADOKAWA)
終盤のあのシーンが圧巻すぎるので、もはや音楽マンガといっていいのでは。読み終わったあと、思わずX JAPANの「紅」をYouTubeで探して聴き込みました。
●青田買い部門
『ネオ・キャット』(青化/祥伝社)
スタイリッシュな絵柄と、とぼけた雰囲気が特徴の新感覚猫マンガ。ちょっと個性的なビジュアルの猫たちもクセになります。
梅本ゆうこ(うめもと・ゆうこ)
ブログ「マンガ食堂」管理人
マンガに登場する料理に魅了され、実際に再現してブログ「マンガ食堂」で紹介。普段は会社員兼主婦。主な著書に『マンガ食堂』(リトル・モア)がある。
2022.12.10(土)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)