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 女性の本音に寄り添ったヒット作を次々に生みだす一方で、いち早く縦スクロールマンガに挑戦し、今年はNFTへの進出も! マンガ界の最先端を走り続けるマンガ家の東村アキコさんが今、立つ場所とは? CREA2022年秋号「夜ふかしマンガ」特集掲載のロングインタビューを2回に分けて全文公開します。

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未知の分野に軽やかに挑戦

 ゴシップサイトのライターとして忙しい日々を送る遥は、憧れの俳優SORAの熱愛記事をまとめた日の翌日に、幼い頃に淡い想いを抱いていた年下の男の子のことを思い出す。

 初恋がテーマの作品『私のことを憶えていますか』(以下、わたおぼ)の「ピッコマ」での連載が完結したばかりの現在も、多忙な毎日を送るマンガ家の東村アキコさん。マンガ1話を生み出すのにどのぐらいの時間がかかるものなのか。

「夜は仕事をしないと決めていて、現在はアシスタント7、8人で1話を4日ぐらいで仕上げています。『わたおぼ』はオールカラーだったので、多いときは10人ぐらい。うちはちょっと多い方です」

 東村さんがマンガを描くときに使うのは、紙とペンではなくiPad。

「2015年にお絵描きに特化した大きいiPad Proが発売されて、『この機能があればできるかも』ぐらいのノリで発売と同時に乗り換えました。アシスタントにデジタルに強い若い子が多いので、『これはどうすればいいの?』と聞きながら、練習もなくいきなり締め切りで使った覚えがあります」

 ガジェットはもちろん未知の分野にも躊躇なく飛び込んでいく東村さん。スマホで読める縦スクロールマンガ(以下、縦スク)にいち早く挑戦したのは、17年に始まった『偽装不倫』のときだ。

「2000年頃から、日本のマンガが全体的に密に描き込む方向に向かった時期があったんです。もちろん素晴らしい作品もたくさん生まれましたが、周りをみると作家の負担が増えていて。昔みたいに、人物はしっかり描き込みつつ背景を流す時代に戻らないかなという想いがあったんです。そうしたら『縦スクやってみませんか? フルカラーで大変ですけど、背景はそんなに描かなくていいですよ』と声がかかり、人物に集中できるいい流れが来たと思いました」

 サクサク読めることを求められる縦スク。その中で作品を印象付けるには、キャラクターづくりが重要な課題になる。

「私の場合は、知り合いの性格やビジュアル、職業からファッションまでセットでモデルにしています。そうしないとキャラクターに命が吹き込まれないというか、どうやってお話をつくっていいのか分からないぐらい。基本は本人に許可を取っています。取らないケースもありますが、『これ私ですよね』って分かるみたいです。今まで怒った人はいないので、それに甘えさせてもらっていますね」

2022.09.19(月)
Text=Mao Yamawaki
Photographs=Wataru Sato

CREA 2022年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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