今どき女子たちの
リアリティをきちんと描きたい
「だから僕と不倫しませんか?」
年下のイケメン韓国男子からの不意打ちの告白で、ガチガチに固まった心の殻が破られる。そんな独身アラサーのリアリティを描いた東村アキコさんのオールカラー長篇コミック『偽装不倫』。
主人公の鐘子は30歳独身。3年続けた婚活に疲れ、自信を失い、投げやりな気持ちでいた。
「約5年前、『東京タラレバ娘』の頃のアラサーはいい男がいないから結婚できないという発想でしたが、今作の鐘子さんは、ちょっと違う。
うまくいかないのは自分に責任があると分かっていて、夢見ることさえできない世代のように感じます」
鐘子がひとり旅の機内で出会ったのが韓国人のジョバンヒ。結婚をしている、と思わず噓をつき恋が始まる。
「噓をつくっていうのは見栄からなんですけど、噓による“気の乱れ”で場が荒れることで恋心が芽生える。隙ができないと、恋愛は始まりませんからね」
ロマンティックな韓流の恋の形
Kポップ好きでソウルを何度も訪れている東村さんは、韓国人男性のカッコよさを実感しているという。
「韓国は愛情を前面に出すカルチャーです。スクランブル交差点のど真ん中で、女性を抱きしめるとか、少女マンガみたいなことをするそうですよ(笑)。
鐘子さんきれい、と普通に言うジョバンヒの言葉や振る舞いはファンタジーではなく、現実にあることだと思います」
コミックは4巻が出たばかり。連載媒体はスマホのマンガアプリで2017年より日韓でスタート。韓国の若者の間で流行中のスマホ画面を縦にスクロールして読む形式だ。
「新たな挑戦でしたが、反響の大きさ、拡散力に驚きました。普段、マンガ雑誌を読まない方にも興味を持っていただいているんだなって」
「縦スクロールマンガ」の特性に合わせて描き方も変えたという。
「絵で見せるより、セリフ中心で展開したほうが読みやすいんです。キャラクターばかりがしゃべる“顔マンガ”は技術がないことの表れでしたが、デバイスによってこれまでの常識がひっくり返ってしまった。
色付けも慣れたらラクだし、マンガのデジタル化に憂いはありません」
現在も「LINEマンガ」で毎週土曜に更新され、感想やコメントが物語のヒントになり、読者と一緒に作っている感覚が楽しいそう。
ウェブと単行本の両輪で話題を呼ぶ『偽装不倫』はドラマ化され、2019年7月10日(水)より日本テレビ系列で放送される。
「鐘子のイメージは杏さんだと思いながら描いていたので、キャストが彼女に決まった時はうれしかったです。生真面目で、きれいなのにどこか不器用な感じが杏さんならしっくりきます。
相手役は宮沢氷魚さん。THE BOOMの宮沢和史さんのご子息です。ドラマでは韓国人設定ではないですが、彗星のごとく現れた異国味ある人というイメージがぴったりだと思います」
こじらせ女子が幸せをどう摑むのか。東村さんが導く未来とは──。
東村アキコ(ひがしむら あきこ)
1975年生まれ、宮崎県出身。1999年「ぶ~けデラックス」増刊でデビュー。2007年よりスタートしたエッセイマンガ『ママはテンパリスト』が大ヒット。10年に『海月姫』で講談社漫画賞を、15年に『かくかくしかじか』でマンガ大賞を受賞する。ドラマ化された『東京タラレバ娘』をはじめ、『美食探偵 明智五郎』『雪花の虎』など、多くの人気作品を手がける。
コミック『偽装不倫』
独身の鐘子は既婚者と噓をつき、年下のジョバンヒと恋に落ちる。噓に噓を重ねる罪悪感と本物の恋心に翻弄され、揺れ動くラブストーリー。
著・東村アキコ
(YLAB JAPAN)
文藝春秋 既刊4巻
定価 各950円
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Column
C&C インタビュー
今月のカルチャー最前線。一押しの映画や舞台などに登場する俳優にお話を聞いています。
2019.07.10(水)
撮影=末永裕樹