夢と現実を移ろう 子どもマインドを曲作りに込めて
彼女たちも出演したCM「爽健美茶のラップ」で注目され、人気のアニメ「映像研には手を出すな!」のオープニングテーマ「Easy Breezy」のMVが800万再生回数を突破した、chelmico(チェルミコ)。
キレのあるラップと洗練されたトラック、そしてふたりのチャーミングなキャラクターで今、目が離せない存在だ。今月リリースされるサード・アルバム『maze』についてふたりに聞いてみると。
「ちょうど次のアルバムをどういうものにしようか考えてた時期に“映像研”からオファーがあって『Easy Breezy』を作ったことで、原点に戻れたというか、初期衝動が蘇ってきたところがあるんですよね。このご時世でツアーが中止になってしまったので、結果的に曲作りに専念できました」(Mamiko/以下M)
遊び心が存分に注入された『maze』は、ジャンルレスな音楽性に溢れ、カオティックだ。
「『Easy Breezy』が子どもにすごく人気だったんです。『親子で聴いてます』っていうSNSでの書き込みが多くて。
私たちで言うと、RIP SLYMEに憧れてラップを始めてchelmicoを結成したので、子どもたちにとって、それに近い存在になれてきてるのかなという感慨もあった。だったらもうがっつり子どもの時の自分に聴かせたいと思えるアルバムにしたかったんです」(Rachel/以下R)
「それで『子どもマインドをテーマに』ということになりました。小さい頃、夢で見たのか現実だったのかわかんなくなったりすることがあって、その時見た変なものが今でも頭に残ってたりする。
そんな心に刻まれたトラウマみたいな感覚を、与えられるものにしたかった。だから、気持ち悪かったり不気味なムードの曲もあります(笑)」(M)
カルチャーの発信力も大きい
お笑い、本、ゲーム、ラジオなど、それぞれが好きなものを活かしたソロの仕事も増えており、カルチャーに造詣が深いことでも知られている。
そんなふたりの世界が交ざり合うような、仲の良い、ゆるいトークも魅力だ。結成から6年、一度もケンカをしたことがないそうだが。
「機嫌悪い時は先に通知しますね(笑)。 『ごめん、今日私うまく反応できないかも』って」(R)
「あと『内緒ね』って言われた話は絶対口外しない」(M)
「映画の『ファイト・クラブ』みたいな、うちらのルール1は『口固く』(笑)。それと、なるべく何でも話すかな。曲のイメージもまずふたりの意見を固めておかないと、あとでスタッフを含めて話した時、『え、そう思ってたの?』って、ズレが生じちゃうしね」(R)
「ね。 『maze』の方向性もやっぱり気分が一緒だったし」(M)
息の合ったふたりのリズムが聴き手に刺激を与え、“今”を颯爽と駆け抜ける姿に、わくわくさせられる。
chelmico(チェルミコ)
RachelとMamikoからなるラップユニット。2014年、結成。18年、ファースト・アルバム 『POWER』でメジャーデビュー。「爽健美茶のラップ」をはじめ、多くのCMソングやドラマのテーマソング、楽曲提供をしている。19年、セカンド・アルバム『Fishing』のツアーは全公演ソールドアウト。
アルバム『maze』
NHK総合テレビアニメ「映像研には手を出すな!」のオープニング曲「Easy Breezy」「Limit」「Terminal着、即 DANCE」など、全13曲収録。初回限定盤は2020年8月26日(水)発売。DVD付き。
Column
C&C インタビュー
今月のカルチャー最前線。一押しの映画や舞台などに登場する俳優にお話を聞いています。
2020.08.08(土)
文=小松香里
撮影=佐藤 亘