今年、また一つ大きな
ターニングポイントが訪れた
映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』で、壮絶な人生を駆け抜けた太宰治役に小栗旬さんが挑んだ。“太宰は小栗くんでなければ”と、監督の蜷川実花さんから直接オファーを受けたという。
「大変そうだな」と悩みつつも出演を決意。それから太宰に寄り添う日々が始まった。
「まず、脚本の早船歌江子さんが参考にされた資料に目を通すところから始めました。あとはとにかく、太宰の著作をたくさん読みましたね」
妻子がありながらも2人の愛人に溺れていく様を、小栗さんは大人の色気たっぷりに演じている。
「痩せることが色気を作り出す方法の一つなのかなと。丸い人より尖っている人のほうが色っぽい。だから色気が必要な役を演じる時は、毎回体を絞るようにしているんです。今回も半年かけて落としていきました」
結核で体を壊していく姿を表現するためにも、減量は撮影中も続いた。
「最終的に63 kgまで落としました。ピークの時は食事や水分も抜いたので、最後の雪道のシーンでは全身がつって体が思うように動かなくなってしまって。減量はプロのもとでやるべきだなと反省しました」
これだけ徹底的に役と向き合うからには、相当な集中力が必要なはず。その中で、普段の生活との切り替えは一体どうしているのだろう。
「子供との時間を持つことで、かえって切り替えがしやすくなったかもしれません。
それが俳優としていいことなのかはわからないですが、精神的に強くなっているので、僕はプラスのこととして捉えています」
世界との差を痛烈に知った
経験がもたらしたこと
小栗さんといえば、来年公開予定の映画『ゴジラ VS.コング(仮)』で、ハリウッドに進出したことも話題に。
「完成した作品の中で自分がどれだけ重要なキャラクターになれているか。それによって今後の人生が変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。
でも、たとえこれっきりになってしまったとしても、未知の世界を体験できたことは自分にとって大きな経験であり、とてつもなく楽しい時間でした。
急に入ってきた仕事だったので自分としてはかなり準備不足だったんですが、参加できたことに意義があると思っています」
世界を見ても俳優として何かが変わったことはない。ただ、世界との差を知る経験として、一つの大きなターニングポイントになったという。
「スケールの大きさがあまりに違うんですよ。
世界に向けて作られるものと国内に向けて作るものとでは、掛けられる予算が全然違うから仕方ないんですが、それでもやっぱり普段とは、お金の掛け方も時間の掛け方もスタッフの数もすべてが違う現場でした。
日本が世界に向けて発信できるものを作れるまでの道のりは長いなと。色々考えさせられるいい経験でした.。」
新たなステージへと一歩を踏み出した小栗さん。追い風も向かい風も力に変え、未来を切り開いていた。
小栗 旬(おぐりしゅん)
1982年12月26日生まれ、東京都出身。ドラマ「GTO」(1998)で初めて連続ドラマにレギュラー出演。「花より男子」シリーズ(2005、2007)の花沢類役でブレイクする。近年の出演作に映画『ミュージアム』(2016)、映画『銀魂』シリーズ(2017、2018)などがある。さらに、来年公開の映画『罪の声』や、期待感が高まる、ハリウッド版『ゴジラVSコング(仮)』が待機中。
映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』
太宰治の不朽の名作、『人間失格』の誕生秘話。太宰治の妻・美知子を演じる宮沢りえ、愛人役の沢尻エリカ、二階堂ふみなど、超豪華キャストが集結。2019年9月13日(金)全国公開。
Column
C&C インタビュー
今月のカルチャー最前線。一押しの映画や舞台などに登場する俳優にお話を聞いています。
2019.09.08(日)
文=菅野綾子
撮影=榎本麻美
スタイリング=HIROHITO HONDA
ヘア&メイクアップ=CHIKA KIMURA(tsujimanagement)