一番大切なのは台本
そこに、すべての答えがある

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 異例の大ヒットを記録した映画『新聞記者』で、日本の映画界に本格進出を果たしたシム・ウンギョンさん。

 これまでも韓国本国で『サニー 永遠の仲間たち』や『怪しい彼女』に出演するたび、その演技力が高く評価され、実力派女優として唯一無二の存在感を放っていた。

 それでもなお、「俳優として、日本をはじめ、いろいろな国でお芝居をしてみたかった」のだと言う。

 そんな彼女が『新聞記者』以前に撮影に挑んだのが日本映画初出演作となる『ブルーアワーにぶっ飛ばす』。

 ウンギョンさんは、夏帆さん演じる心が荒みきった30歳のCMディレクター・砂田の“秘密の友だち”清浦を演じる。

「私の中で清浦は、主人公を隣で助けてあげる『アラジン』のジーニーや『アナと雪の女王』のオラフのようなイメージ。でも清浦はただ明るいだけの人ではないんですよね」

 清浦は砂田が失った“自分らしさ”を映し出す重要な役割でもある。

言葉よりも大事なものがある

 驚いたのは、セリフのみならず、来日中のインタビューまでも通訳を介さず話す日本語能力の高さ。

「日本語の勉強を始めたのは2年前。当初、取材は通訳さんと一緒にやる予定だったのですが、たとえ言葉足らずでも、自分で話したほうがインタビュアーさんの気持ちにちゃんと応えられるような気がして。それで事務所の方に自分から、“キャッチボールがしたい”と伝えました」

 日本語が完璧でなくても心の機微は伝わる。彼女のお芝居を見ていると、その想いをとても強く感じる。

「もちろん発音の正確性も大事だと思いますが、それよりも演じるキャラクターを私が私のものとしてどう作り、どんな感情を入れていくかということのほうが大事な気がして。とくにこの作品の箱田優子監督は、清浦の生の感情をとても大事にしてくださる方で『セリフも大切だけど、“今”の気持ちを優先してほしい』と声をかけてくださいました」

 台本を読み込むことの重要性にも改めて気づかされたという。

「もともと私が役作りをする上で一番大事にしているのが、台本を何度も読むこと。その大切さをこの撮影期間により強く感じて。最初は日本語を覚えるために何度も何度もセリフを声に出して読んでいたのですが、読めば読むほど新しいアイデアが浮かんできて。やっぱり俳優にとって一番大切なものは台本だな、と改めて感じました。私はそこにすべての正解があると思っています」

 これからやってみたい役柄を聞いてみると、少し意外な答えが。

「まだ一度もやったことがない悪役に挑戦してみたいんです。それから、いろんな日本の監督にも出会いたい。みなさん、よろしければぜひ声をかけてください! (笑)」

 今までのイメージを小気味よく裏切るヴィラン(悪役)な彼女を、日本の映画界で観てみたい。

シム・ウンギョン(しむ・うんぎょん)

1994年5月31日生まれ、韓国出身。9歳の時、ドラマ「張吉山」で子役デビュー。2014年に主演した韓国映画『怪しい彼女』が観客動員数860万人を超える大ヒットを記録し、数々の賞を受賞。舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』(2019)を皮切りに、日本での活動を本格的にスタート。松坂桃李さんとW主演した映画『新聞記者』での胸に迫る演技は記憶に新しく、日本の批評家からも大絶賛された。

©2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会

映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

砂田(夏帆)は自分の劣等感の源である大嫌いな故郷に清浦(ウンギョン)と帰ることに。清浦が付いてくるのには理由があった……。出演/夏帆、シム・ウンギョン他。2019年10月11日(金)全国公開。

Column

C&C インタビュー

今月のカルチャー最前線。一押しの映画や舞台などに登場する俳優にお話を聞いています。

2019.10.08(火)
文=菅野綾子
撮影=榎本麻美
スタイリング=Babymix
ヘア=shuco
メイクアップ=AKIKO SAKAMOTO

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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