この記事の連載

  • “佐渡前寿司”を味わいに「りきすしさわた」へ

 佐渡のお寿司屋さんには珍しい江戸前スタイルで、2020年にミシュランガイド新潟 2020 特別版に選出された島の名店「りきすしさわた」を訪ね、密着取材を敢行。記事前編では店主・中野國広さんに同行して早朝の佐渡市場へ。そして今回の後編では仕込みの様子とお待ちかねの実食です。

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数週間寝かす熟成寿司も...計算し尽くされた職人技

 いよいよお店に戻って仕込みをスタート。魚をたわしで軽く磨き、丁寧にウロコを引いていきます。皮を剥ぐならウロコを取る必要ないのでは? と思ってしまいましたが、そのままにすると臭みが残ってしまい、皮を剥ぐ際もまな板にウロコが付着して衛生的にもよくないのだと言います。

 お次は背中とお腹の身を切り離し、中骨と腹骨を外していく作業です。注意しないと身まで取れてまうので、包丁の角度に気をつけながら骨のみ取り除いていきます。

 りきすしさわたといえばハイレベルな熟成寿司も目玉のひとつ。仕込みの際は切り身に塩を当て、クッキングペーパーで包み、その上からラップで密封して冷水に沈めていきます。

 この熟成技により魚のたんぱく質が分解され、アミノ酸が増加して旨味がアップするわけです。

 開店2時間前になるとキモとなる酢飯の準備にとりかかります。お米は一度精米したものを納品してもらいますが、酸化している部分を削り取るためにお店でもう一度精米します。

 パエリアのような湯炊きスタイルで約7分、ピカピカと輝くお米が顔を出します。ここから酢飯を作っていくわけですが、ネタの味を壊さないように酢の量は気持ち控えめにしているのだとか。

 ラストの大仕事は卵焼き。いりこ出汁を加え、熱々のフライパンに卵を流し込むと、ジューッと耳触りのいい音が聞こえてきました。

 夏場は卵が薄くなるので出汁を多めにするなど、季節によって味わいを変えているのだとか。

 しっかり焼き色がついた黄金色の卵焼き、見るからに美味しそうです。

2025.10.01(水)
文=星子莉奈
写真=石川啓次