この記事の連載

  • “佐渡前寿司”を味わいに「りきすしさわた」へ

佐渡の銘酒をお供に。珠玉の握りおまかせコース

 ついにお待ちかねの実食タイムへ。

 基本的には握りオンリーのおまかせコース一本ですが、今回は特別につまみも出していただけることに。

 まずはビジュアルが強い贅沢な毛蟹のつまみが登場。土佐酢で味付けされた蟹にサッと酢橘を絞ってさっぱりと。カニ味噌と一緒に食べるのも乙。

 2日前から寝かせて脱水したひがんふぐはしゃぶしゃぶでいただきます。自家製の韓国唐辛子(佐渡の金井産)と酢味噌をあわせて。もっちりとしたふぐの歯応えが抜群です。

 タコの桜煮は、土鍋に昆布を敷いて、小豆と玉酒を入れたものを蓋をしてガムテープで密封。さらに重石を乗せて2時間炊いています。それだけでも驚きなのに、その後煮汁に味付けをし、炊きあがったタコにかけて、一晩味を馴染ませて、ようやくお客さんに提供できるのだそう。ふっくら柔らかな食感とほんのり甘さを感じるタコは日本酒を美味しくする逸品。3日間の仕事が味わいから感じられます。

 日本酒は佐渡を味わえる銘酒揃い。地酒の真野鶴や金鶴、真稜がラインナップし、真稜の純米活性にごり300mlなどのスペシャルエディションもお目見え。

 握りの一貫目は格子状にデザインされたアカイカ。仕上げに塩とスダチを絞り、ポン酢を数滴。想像の斜め上をいく歯切れのよさ、そしてねっとりと濃厚なうま味がたまりません。

 酸の角が取れた優しい味わいの酢飯とのマリアージュも見事。

 こちらは朝市場で見つけたヒラメ。塩を20分ほどあてただけ、というヒラメはまだ生きているような活きの良さを感じられます。ヒラメの真価を発揮した素晴らしい握りです。

 脂がしっかり乗った艶々のアジは旨味が段違い! 口の中で柔らかくトロける食感がなんとも口福。

 今が旬のシマエビはプリッとした身が口の中でほどけ、濃厚な甘みがじわじわと広がっていきます。

 新潟や北陸地方では有名なバイ貝。心地よい歯触りと強い旨味がたまらず、思わず唸りました。

 ご存知高級魚のノドグロ。5日間寝かせ、皮と身の間にある脂を炙って香りを引き立てています。

 珍しい姿で現れた骨切り穴子。炭火で焼きあげているので口の中でほどけた瞬間にその香ばしさが爆発します。

 出汁を含んだほんのり甘口の卵焼きはほっとする味わいで心が和みます。握りはこちらでフィニッシュ。

 ネタは新鮮で文句なし、しかしながら仕込みが甘いゆえに寿司としての完成度が低い島のお寿司屋さんを筆者は沢山経験してきました。だからこそ、りきすしさわたとの出合いは衝撃的なもので、素材も腕も文句の付けようがない島に佇む寿司屋の存在に思わず感嘆させられてしまったのです。

 島の恵を用いて圧倒的な寿司体験を叶えてくれるりきすしさわた、船に乗ってでも通いたい唯一無二の名店です。

りきすしさわた

住所:佐渡市河原田諏訪町112甲
営業時間:18:00~21:00
定休日:水・日曜
電話番号:0259-57-1991

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2025.10.01(水)
文=星子莉奈
写真=石川啓次