この記事の連載
CREA夜ふかしマンガ大賞に作品を推薦してくださった35名の皆さん。最愛の一作や読書スタイルとともに、マンガ愛に溢れた回答を6回に分けて紹介します。
» 門倉紫麻さん[ライター]
» 神田伯山さん[講談師]
» 雲田はるこさん[マンガ家]
» コナリミサトさん[マンガ家]
» コミック担当Sさん[都内大型書店]
» 実松由夏さん[SHIBUYA TSUTAYAコミック担当]
門倉紫麻さん[ライター]
Q1:最愛の一作
『ハッピー・マニア』(安野モヨコ/祥伝社)
ギャグ、スピード感、セリフ、ファッション、恋愛観、すべてが当時の現実を生きる私に(たぶん私たちに)必要なものだった。こういうのが読みたかったんだ! と心で叫んだ。マンガそのものを更新し、私のマンガ愛を再燃させてくれた作品です。
Q2:マンガを読むスタイルは?
ほぼ毎日、何かしら自宅で読みます。紙のマンガ雑誌、デジタルの雑誌、各社マンガアプリ、Twitter、紙の単行本、デジタルの単行本……メディアが混在している状態が続いています。紙のマンガ誌はお風呂で丸1冊読み通すのにちょうどよくておすすめです。
Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由
『後ハッピーマニア』(安野モヨコ/祥伝社)
45歳のシゲタと50歳のフクちゃん、(ダメなとこ含め)かっこいい中年コンビだけでなく、正しき30代・詩織、「女」で生き抜く59歳・寿子など女性が全方位的に力強く、生き生きと描かれている。安野さんが常に今を描く作家なのだとあらためて分かる作品。
『ファッション!!』(はるな檸檬/文藝春秋)
連載では違う種類の怖さがプラスされてきて混乱中です……でもそれもまた快感。
Q4:各部門への推薦作品とその理由
●女の人生部門
『恋じゃねえから』(渡辺ペコ/講談社)
帯に「創作と性加害をめぐる問題作」とあるように、読んでいて苦しくなりますが、タイトルの『恋じゃねえから』の力強い響きと〈今度はひとりにはしないからね〉という主人公の言葉に、私も負けねえぞ! と熱い気持ちがわいてきます。
●お仕事部門
『ファッション!!』(はるな檸檬/文藝春秋)
大賞にも推薦していますが、ファッション業界の構造そのものもまた生々しく描き出されているので、こちらの部門にも。「デザイナーを売る人」がいてこそ成立するのか! という衝撃があるし、そこに情熱と狂気が宿っていく様が本当に怖くて最高に面白いです。
●家族部門
『転がる姉弟』(森つぶみ/ヒーローズ)
再婚家庭の明るい側面にあえて強く光を当て続けるような描き方にぐっとくる。家族というものの負の側面も別の形で登場させているが、そこにも希望がまざっていることにまたぐっとくる。
●戦争部門
『ひねもすのたり日記』(ちばてつや/小学館)
幼少期を満州で過ごし、引き揚げを経験したちば先生のエッセイマンガ(戦中戦後の話は主に1・2巻に収録)。戦争の凄惨さを伝えてくれるのと同時に、どんなにつらい場面でも生活の細部を描くことに愛を注ぐちばてつやらしさが炸裂していて、「読んでね」と励まされているような、温かな気持ちで読むことができます。
門倉紫麻(かどくら・しま)
ライター
主にマンガにまつわる記事を企画、執筆、マンガ家へのインタビュー多数。著書に、ジャンプ作家の仕事術を取材した『マンガ脳の鍛えかた』(集英社)など。
2022.12.11(日)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)