暮らし上手な方々が日頃愛用している道具や家具をじっくりと拝見する連載「暮らしのMY BEST」がスタートします。

 ご登場いただいた方の目を通して選ばれたものたちが、快適な暮らしにどう役立っているのか、その魅力をひもときます。もの選びの参考にぜひ!


道具に求めるのは 機能に繋がるいいデザイン

◆Case01 小泉誠さん(家具デザイナー)

 「暮らしのMY BEST」、記念すべき第1回に訪れたのは家具デザイナー・小泉誠さんのオフィスです。

 オフィスといっても、本格的なキッチンがあり、家庭のダイニングのよう。

 小泉さんは家具だけでなく、家庭用品から建築まで、暮らしまわりのデザインを幅広く手がけています。だから仕事場も、家にかぎりなく近い感覚であることが大切。

 そしてキッチン道具をデザインするときは、ここで数多くの試作品を試したり、自身でデザインした道具を使ってスタッフと食事をしたりしているそう。

 さっそく尋ねてみました。「名品」といえるキッチン道具の条件とは、なんでしょう。

「道具であるからには、使いやすいことが一番ですよね。そこには、手入れのしやすさと、丈夫かどうかということが重要。

 そして機能が十分であること。八分では足りないし、十二分だと多すぎる。毎日無意識に手にとり、長く使い続けている道具は、きっとその条件が満たされていると思うんです」

 ロングライフデザインといわれるものには、見た目はもちろん、使っていてなぜか心地よく、扱いやすいという機能性も備わっています。

 使いやすさへの緻密な計算がなされているからこそ、長く愛用できるといえそう。

 そんな機能とデザインの両方を備え、小泉さん自身が愛用している暮らしの道具を見せていただきましょう。

じょうろ型のドリップケトル

 こちらは、ほうろうのドリップケトル。ふつうのやかんとして使えるのはもちろん、コーヒーをドリップするときの注ぎ心地が秀逸です。

「注ぎ口が三角の断面になっていて、ちょろちょろと繊細にお湯を落とすことができます。持ち手の形も、上に重心がくるようにしているので、手を傾けやすい。いわゆるじょうろの形です」

 籐を巻くことで手にやさしく、熱をさえぎる効果も。飴色に変化していく経年変化も楽しめます。

2020.03.28(土)
文=前中葉子(BEAM)
撮影=平松市聖