誘惑が多すぎる
中古レコードコーナーで
我をわすれる

 思わずグッズコーナーで15分ほど費やしてしまったが、本番はここからだ。中古レコードの品定めである。

 よし。ここは、CREA30周年にふさわしい、オシャレなレコードをチョイスしよう。そんな決意は5秒で頭から飛んで行った。「冥途イン・ジャパン」(ジプシー・ブラッド)という衝撃的なタイトルが目に入ったからである。

 冥途? き、聴いてみたい。が、値段を見てみると3,550円! くっ、欲しいものはいつも指の隙間からこぼれ落ちていく。嗚呼、これも世の定め……。

 次に私を誘惑したのが「新宿ダダ」である。なんと3枚もあり、

「ねえ、私を連れてってくんなきゃダダ(ダメ)!ダダ(ダメ)!ダダ(ダメ)!」

 グラマラスな山川ユキさんに3連発でダダをこねられたようなもの。強気な女は魅力的だ。私はジャケットに向かい「俺の女になるか?」、そうウインクをして手に取った。店の中で何をしているのかという感じだが、あの場であのジャケットを目にしたら、誰もがそうするだろう!

2019.12.30(月)
文・撮影=田中 稲
撮影=松本輝一
写真=文藝春秋