眠らない街、新宿――。
一度迷い込んだらもうおしまい、帰宅を諦める酔いどれ達が夜明けまでララバイを歌う、東京最大のラビリンス――。
何度ここに来ただろう。そして、何度道に迷ったことだろう。一度で目的地にたどり着いたこと? ハッ、あるわけないサ。グーグルマップ? 歩きスマホが怖い街だとよ……。
まず新宿駅から出るのにひと苦労。駅を出たら出たで、同じ場所をグルグルと彷徨い続けた。またビックカメラ、またビックカメラ(泣)……。この新宿メリーゴーランドを5度ほど繰り返してからである。東京のタイムトンネル「ディスクユニオン昭和歌謡館」にたどり着いたのは。
「ディスクユニオン昭和歌謡館」の噂は以前から聞いていた。しかしその全容があまりにもミステリー。
今回の取材の発端となった文春の昭和歌謡クレイジーと呼ばれるヤング氏は、
「ああ、最高にホットでイケてる場所さ」
ニヒルな笑顔を浮かべ多くを語らない。担当となったアケミ嬢に至っては、
「ディスクユニオン昭和歌謡館には自由の風が似合う。好きに書きな、アンタのキャンバスにアンタの色でサ。ただ、これだけは覚えておきな。あの店には魔物が住んでるってことを……」
意味ありげに遠くを見つめるばかりである。
どどどういうところなのか、ディスクユニオン昭和歌謡館! HPからは確かに濃厚な空気は漂っているが、想像はいろんな方向に膨らむばかりだ。
(ディスクユニオン昭和歌謡館ホームページトップ)
https://diskunion.net/shop/ct/showa_kayou
2019.12.30(月)
文・撮影=田中 稲
撮影=松本輝一
写真=文藝春秋