芝居のプロに近づくことは
いちばんの素人になること

――そんな『愛がなんだ』の現場を通じて、若葉さんが学ばれたことは?

 どの現場でも学ぶことはあると思うんです。なにより、ラブストーリーに対するアンチテーゼを得意とする今泉さんの映画に出られたことが嬉しかったんです。ずっと、今泉さんが書いたセリフを、自分ならもっと体現できると思っていたので! この現場は、自分の自信にも繋がりました。

――6月に30歳を迎えるにあたり、俳優としての今後の展望を教えてください。

 ど凡人すぎて、俳優らしさなんて、まったくなくて。「ど凡人すぎる俳優がいてもいいでしょ?」とも思っているぐらいなんです。まだまだカメラの前で芝居をすることに対して、羞恥心みたいなものはあるし。顧みると、芝居のプロにいちばん近づくことって、いちばんの素人になることなんじゃないかと。そうすれば、生々しいものを体現できるんじゃないかと思っています。どうでもいいセリフに共鳴してもらえたら嬉しいですね。スゴいとか、カッコいいと思う人はいっぱいいても、その人にはなれないですから。だから、自分は自分なりのカラーで戦うしかないと思っています。

若葉竜也
(わかば・りゅうや)

1989年6月10日生まれ。東京都出身。幼少時代から俳優として活動。陰のある役から、アクの強い役まで幅広い演技力で、映画・ドラマ・舞台などで幅広く活躍する。2016年公開の『葛城事件』では、第8回 TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。

『愛がなんだ』

主人公は28歳のOLテルコ(岸井ゆきの)。彼女は一目ぼれしたマモル(成田凌)に想いを寄せている。自分の時間のすべてをマモルに捧げ、その結果、仕事を失いかけても、年下のナカハラ(若葉竜也)を振り回す自由奔放な友人・葉子(深川麻衣)から冷ややかな目で見られても、彼一筋の毎日を送る。
2019年4月19日(金)より、テアトル新宿ほかにて全国公開
http://aigananda.com/
(C)2019アイコン映画「愛がなんだ」製作委員会

くれい響 (くれい ひびき)

1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2019.05.03(金)
文=くれい響
写真=白澤 正
ヘアメイク=FUJIU JIMI
スタイリスト=Toshio Takeda(MILD)